始まりは死 ページ1
覚えているのは、耳元で大きく鳴り響く電車のクラクションの音と、正面で笑う友達の歪んだ笑顔だった。
「痛え……」
酷くジンジンと痛む頭痛に起こされ、目を開ける。最初に思ったのは、天井の色が違うということ。そして、喉に違和感があること。五体満足でいること。部屋の酸素が、足りないということ。
「なんだ、ハ、練炭？！」
締め切られた部屋の中の中央に置かれた練炭。パチパチと心地よい音を鳴らしているが、確実に状況だけ見れば一酸化炭素中毒自i殺の情景だった。私は慌ててベットから飛び起きると窓とドアを開ける。練炭を消すと見覚えのないベットにもう一度寝そべった。
「私、死のうとした？エ、いや、人生楽しいしな、ってか私、アイツに突き飛ばされて線路に落ちたんじゃ……？」
状況整理をしながら痛む頭を支えながら考える。私を突き飛ばした友達も確かに気になるが、心当たりはある。そんなことよりこの状況だ。冷静に考えると、ここは。
「違う世界、だよな。」
どうしてこんな突飛な考えができるか。理由はいくつかある。
1つ目、記憶がハッキリしていることだ。目を閉じる前までの記憶を鮮明に思い出すことが出来る。それは記憶喪失をしていないという事だから、この状況に心当たりがないのは自分ではない誰かの視点で世界を見ているからだ。
2つ目、先程立ち上がったときの視線の高さが普段の自分より低かったこと。私の身長は約165センチぐらいだが、だいたい10センチぐらい、視線が低いように感じた。
3つ目、横でずっと垂れ流しにされているテレビから聞こえた「流動体のヴィラン」「オールマイト」「中学生が人質に」という単語に聞き覚えがある。普通、テレビから「ヴィラン」という単語は、私の住んでいる世界では流れないからだ。
以上のことから推測すると、私のいる世界は、私がずっと憧れていた「僕のヒーローアカデミア」の世界だという推測になる。
「あー、めんどくせぇことになったなぁ、これ」
練炭の匂いが晴れない部屋で小さくため息をつくとこれからの生活に思いを馳せた。
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作者名：宮 | 作成日時：2020年8月3日 2時
