つまり、君を選べなくて。 ページ1
太宰マフィア時代
『行くの?』
背中にかけられた無愛想な声に、足が止まる。
「…一緒に来るかい?」
振り返って差し出した手は、控えめに弾かれる。
『莫迦云わないで。』
君の震えた瞳で、瞬間揺らぐ。
「それは残念だ。」
私はゆっくりと、君との距離を縮めていく。
『…アンタなんか、何処ぞで野垂れ死んでしまえ。』
君は視線を逸らし、唇を噛む。
「生憎と、死ぬなら美人の隣でと決めているのでね。」
私はそっと、君を抱き寄せる。
『…それなら、私と、此処で、死んでよ。』
頼りなさげに、君が外套を掴む。
「とても魅力的なお誘いだけれど、ごめんね。」
掴まれた服の皺が、深くなる。
『…。』
「……さてと。」
服を掴む手をゆっくりと解き、指を絡める。
「どうか、私のことは忘れてくれ給えよ。」
濡れる目尻に口付けをして、踵を返す。
『……ッ太宰!私は――!』
愛おしいその声に、私は未だ、応えられない。
BGM:『さよなら両片想』
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作者名:miyu | 作成日時:2017年2月16日 21時