伝わるまで【我妻善逸】 ページ24
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私の好きな人は、可愛い女の子が好きだ。
けれど私はがさつで愛想が良くなかった。
だから彼に好かれようと猫を被った。
まぁそんな努力も虚しく、結局は彼を含め、その友人たちにもばれてしまったのだが。
正直それでも問題はなかった。
彼への恋心は気づかれていなかったようだし、何より彼らはこんな私を受け入れてくれた。
強いて問題があるとすれば、私が意中の彼にだけ素で接しきれていないことだ。
それでも何とかやっていけていた。
“今までなら”。
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「ねえ、今かわいこぶったでしょ。」
いつもの癖だった。
猫を被っていた時期が長すぎて、つい名前を呼ばれたのに対して甘えた声で返事をしてしまった。
「なんで?まだ俺には本当のAちゃんを見せてくれないの?」
私の手首を掴んでは、じりじりと壁に追いやっていく彼……善逸くんは珍しく怒っているようだ。
『ああ、ごめんって。
次からは気を付けるからさ、もう離して。』
「それ、何回も聞いたよ。
なんで本当の自分を隠そうとするの?
そんな無理矢理女の子っぽく振る舞わなくても……」
何も知らない癖になぁ。と、どうしてだか人事のように思う。
だから油断していたのか、ぽつりと呟いてしまった。
『どうして可愛くなろうと思うことすら許されないの?』
「え……」
『確かに、こんなが女が可愛くなりたいとか……
何言ってんだって思うだろうけどさ。』
間が空くと、彼が大きく息を吐いてゆっくりと話し始める。
心做しか、更に強く手首を掴まれたような気がした。
「知ってるんだよ。炭治郎とか伊之助にはさ……普通に素顔見せてるんでしょ?
どうして俺には隠しちゃうわけ?」
「その理由が知りたいだけなんだ。」と言う彼の琥珀の瞳に捕えられる。
『………一度しか言わないから。』
あまりにも真剣な顔に、直視が出来ず顔を背けて言った。
『善逸くん。貴方のことが好き“でした”。
好かれたかったから、猫被ってました。以上。』
こんな形でとはいえ、突っかかっていたものを吐き出すことが出来た。
全身にかかっていた重みが除かれたようで場違いにも安心してしまう。
『うん、なんかすっきりした。
そろそろ帰りたいから手、離して。』
自己完結も甚だしいが、本当に居た堪れなくなったため、掴まれた手首を振りほどこうとした。
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凪 - 貴方様の描く冨岡さんが好きです(( (2020年2月3日 14時) (レス) id: b575dccd32 (このIDを非表示/違反報告)
せんか(プロフ) - 美桜さん» 今回も気に入っていただけたようで安心しました。リクエストのリピート承りました!いつも自分では思いつかないようなネタのおすそ分けをしてくださりありがとうございます!今回は早めに取りかかりますので、少々お待ちください。 (2019年12月19日 11時) (レス) id: 6317096ed8 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - お館様原作無視の設定でお願いします。 (2019年12月19日 10時) (レス) id: 87339a530e (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - またリクエストいいですか?夢主柱で夢主煉獄恋人。夢主はお館様悲鳴嶼に告白&アプローチされる。お館様独身。お館様悲鳴嶼は夢主が煉獄と恋人だと知っている。お願いします。 (2019年12月19日 10時) (レス) id: 87339a530e (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - せんかさん» ありがとうございます。話面白かったです。 (2019年12月19日 10時) (レス) id: 87339a530e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:せんか | 作成日時:2019年12月1日 18時