笑わせたい【嘴平伊之助】 ページ3
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「おい芋女、怪我した！手当しろ！」
『もう少し静かにしていただけませんか。』
昼下がり。蝶屋敷のとある小部屋でのこと。
いきなり開いた扉に驚きもせず、また来たのかと言いたげに溜息を吐いた美しい女が一人。
『それに、その程度であれば怪我したうちには入りません。
ご覧の通り私は薬の調合で忙しいのです。』
いつも通り表情を動かさないAは薬草から視線を外さずに告げた。
その様子に頬を膨らました伊之助は、あろうことか猪の被り物を外しては壁に頭を打ち付けて……
『な、何を……』
「デコから血ぃ出た。これだったら怪我に入るか！？」
そんな笑顔で言われても。
Aが溢れ出そうになった溜息を飲み込み、薬を調合する手を止めた。
『えぇ、まぁ…大怪我ね。』
やっとこちらを見たことに当の本人は嬉しそうに怪我をした腕を差し出す。
『額の方が重症ですけれど。』
．
「ほら、礼にどんぐりやる！」
軽く手当を終えると、いつものように拳をこちらに向けてくる。
この人、いつもどんぐりを常備しているのかしら。
何かことある事にお礼と称してどんぐりを寄越してくる野生児に少し愛着が湧きつつある今日この頃。
『ありがとうございます。』
表情が乏しいだけで、根は優しいAは両手でつやつやのどんぐりをそっと受け取る。
「…………」
けれど伊之助はなんの動きも見せない。
不思議に思ってどんぐりから視線を上げると、彼の美しい瞳と目が合った。
『なんでしょう。』
無言でただじっと見つめられ、いたたまれなくなったAはとりあえず沈黙を絶った。
「なあ、A。」
『…は、い。』
ずいっと顔が近付く。
真剣な表情で、珍しく名前を呼ばれれば返事を返すのでやっとだ。
「なんでもねぇ！」
けれど彼はいきなり体の向きを反転させて、そのまま走って部屋を飛び出して行った。
『(まるで嵐のような子ね。)』
また溜息を吐くと、Aは部屋の一角にある引き出しを開けた。
その中にはいくつもの綺麗などんぐり達が丁寧に並べられている。
それを愛おしそうに眺める女の後ろ姿が一つ。
静まり返った部屋にふふ、という優しい笑い声が小さく聞こえた。
「(今日も笑わなかった。)」
『(明日はどんな口実で会いに来てくれるのかしら。)』
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凪 - 貴方様の描く冨岡さんが好きです（（ (2020年2月3日 14時) (
レス) id: b575dccd32 (このIDを非表示/違反報告)
せんか(プロフ) - 美桜さん» 今回も気に入っていただけたようで安心しました。リクエストのリピート承りました！いつも自分では思いつかないようなネタのおすそ分けをしてくださりありがとうございます！今回は早めに取りかかりますので、少々お待ちください。 (2019年12月19日 11時) (レス) id: 6317096ed8 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - お館様原作無視の設定でお願いします。 (2019年12月19日 10時) (レス) id: 87339a530e (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - またリクエストいいですか？夢主柱で夢主煉獄恋人。夢主はお館様悲鳴嶼に告白＆アプローチされる。お館様独身。お館様悲鳴嶼は夢主が煉獄と恋人だと知っている。お願いします。 (2019年12月19日 10時) (レス) id: 87339a530e (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - せんかさん» ありがとうございます。話面白かったです。 (2019年12月19日 10時) (レス) id: 87339a530e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：せんか | 作成日時：2019年12月1日 18時
