悪魔の秘密と恋と嘘2【桃】

71*J side* ページ31

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『彼、Aさんがここへ運ばれた時も一番に駆けつけたんですよ』


淳「………」


『…毎日来て、朝から晩までいるんです。
彼、若いから学生なんじゃないかって思って学校大丈夫なの？って聞いたら学校どころじゃないですって言ったんです。…彼、Aさんの恋人なんですかね？』



ふふふ、と笑う看護師さん。


そして再び目を病室に向けると、
Aの手を握るアイツの背中が目に飛び込んだ。


その瞬間、俺は分かった。


…もう、俺の出る幕なんてないんだ。

俺は、アイツに敵わないんだ、と。



淳「…………………帰ります」


『…え？』



俺の思わぬ言葉に、看護師さんは目を丸くする。



淳「………もう、大丈夫です」



あいつの後ろ姿を見て、何かが動いた。

俺は『もしかしたらAとまた元に戻れるんじゃないか』って勝手に胸に秘めていたと気づいた。


止まっていた針は、とっくに錆びていたんだ。


案内してくれた看護師さんにお礼を言うと
俺はその場を静かに立ち去った。

近くに止まっていたタクシーを呼び
自宅までの道のりを伝えると、
静かに窓の外の景色を見つめる。


なぁ、A。

キミは、俺の彼女で幸せやった？

俺は、Aを幸せにできてた？


別れこそあやふややったけど
俺はAが彼女で幸せやったよ。

こんな弱い俺を許してほしい。


…俺は、………


キミを愛していたよ。









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