ビターチョコ・シンドローム【赤】

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着いたのは、海だった。

街灯は最低限しか灯っておらず、奥に見える工業団地がイルミネーションの役割を果たしている。

私たちは車を降りると、海の近くへとやってきた。


だんだん目が慣れてきて、静かに、でも確かに音を立てて波が行ったり来たりするのが見えてくる。

私たちは砂浜に腰を下ろした。



「あ、望くん禁煙は？」

望「んふ、今日だけ」



すると、座るやいなやポケットから煙草を取り出して火をつける望くん。

いつだったか禁煙宣言を掲げていたはずだけど、常備しているということは失敗したんだろう。



大「肺癌なるで」

望「ん？なったらなったで、まあ」

大「アホか」



そうツッコんだ大毅は、煙草は吸っていない。

お互い軽音楽サークルに入っていて、先輩たちに煙草を勧められるけど一切吸っていないな。

私は煙草にいい思い出がないから絶対吸わないけど、大毅が吸わない理由が知りたい。



望「俺風下やからAんとこに煙いかんよ」

「いやまあ私は慣れてるよ」

望「けどA煙草嫌いやん？」



その辺は配慮するで、と笑う望くんはやっぱりカッコイイ。

改めてこの位置にいれるのが嬉しいなと感じた。



大「じゃあ吸うなよ」

望「えーでも海で一服とか最高やで、ホンマに」

大「…何がええんだか」



大毅が煙を煩わしそうに振り払う素振りを見せる。

嫌そうな顔をしている辺り大毅も煙草が嫌いなんだろう。

一度も吸ったところを見たことがないから……

なんて思っていると、望くんが笑いながら煙草の灰をを携帯灰皿に落としながら



望「しげ、普段スパスパ吸うくせにこの気持ち分からんねんな〜」



なんて言った。

私も大毅もその言葉にだまりこんだ。




大「………」

「………」



え…？

大毅、煙草…裏で吸ってるの？







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