【d!】可惜夜と朝顔【ut】 (ページ1)

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Prologue ページ1

◇

正直言うと、あまり不幸せな方ではなかった。

両親は小さい頃に離婚したので父親はいないが、母親とは喧嘩はあれど仲が悪くはなかったし、特別目立つタイプではないけれど、友達もそれなりにいた。

ただ、何時からだろう。

高校受験が間近に差し控えたとき。友達付き合いで上手くいかなくなったとき。高校に入ってから成績が下がってしまったとき。親と大喧嘩をしたとき。

理由はいくらでもあった。
時が経ったらいつか、笑い話になってしまうような小さなこと。しかし塵が積もって山となるように、私の心の中に小さなことがどんどんと溜まっていく。

まだ高校一年生。中学時代の幼さの面影が内面にまで未だくっきり残っている私には、その処置の方法が分からなかった。

心が薄ら淀んでいく。そのせいで少し思考力が低下してしまっていた。だからきっと、いつもはこんなことを言わないであろう言葉を、ほぼ初対面同然の彼に発してしまったのだと思う。

「俺死にたいねん。やから手離してくれへんかな？ほんまに、やめて」
「いいよ。離してあげるから、私と一緒に死んで」

私に手を掴まれた彼＿＿＿愛称鬱、基鬱島大は心底驚いた顔をした。それから掴まれた腕を気にする暇もなく「は？」と困惑した声色をもらした。

これが彼と私の歪な出会いだった。