君の心は難問過ぎる！

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(伊沢視点)





俺があの子を見つけたのは、早稲田大学の学祭でのことだ。





あの日、山本に誘われて行った学祭はとても賑わっていて、活力に溢れていた。


「うわ、すごい人混みだな………流石早稲田……」

「東大生が何言ってるんですか」


思わず呟くと、山本にそう笑われてしまった。

「いやぁ、早稲田生自体の活気があっていいじゃん。」

そう返しつつ周囲に目を配ると、近くにはステージがあった。
今回の学祭のために作られた特設ステージで、ミスミスターコンやバンド演奏なんかが行われる。


そこでは今はミスコン出場者のアピールが行われているらしく、ステージ上では５、６人の女子が並んでいた。

(おっ、あの子可愛いな。)

横目で見てそんなことを思いつつ通り過ぎ、暫く談笑しながら歩いていると、山本が他の奴に呼び出されたらしく謝りつつ走り去って行ってしまった。


それを見送りつつ屋台が立ち並ぶ道を1人でふらふらと散策していると、1店舗だけ、妙に混んでいる屋台を見つけた。
表に立っている子目当てで男性客が多いらしく、辺りは騒然としている。


俺は、そこで笑顔を零しつつ接客している子…………ではなく、その裏でせっせと商品を準備している子が何故か無性に気になって。



その子がこちらを振り向かないかと注視していると、接客していた子が俺に気が付き、えっ、という顔をしたのが分かった。


(やべ、もしかして俺知ってる子か………騒がれたら面倒だし、もう離れよう。)


そう思って立ち去ろうとした、その一瞬だけ見えた、振り返った彼女の顔が、暫く忘れられなかった。

その時は、ただ単に顔が好みだったんだろうと自己完結し、顔も1ヶ月も経てば思い出すことは無くなった。

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