声が出ない君へ－佐野玲於－ (ページ10)

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気持ちよさそうに眠っているA

薬が効いてきたみたいだな

熱もちょっと下がったみたい

何気なくAの部屋に置いてある本棚の上を見た

玲於「これが、Aの両親か」

似てる

どっちかと言うとお母さん似かな

めちゃくちゃ幸せそうに笑ってる

一気に2人とも亡くしたのか…

玲於「…辛かったよな」

顔にかかっているAの前髪をサラッと動かした

おばあちゃんもすぐに亡くして…

玲於「声が…」

どんだけ辛かったか俺には分かんない

今、Aのこと支えてるのは永久さんなのか

玲於「俺が支えたい」

無意識に出た言葉に自分でも気づいていなかった

律「玲於ー、Aちゃん寝てる？」

玲於「おー、おかえり。寝てる」

律「アイス、一応冷凍庫に入れといた」

玲於「Aが起きたら、一緒にたべよ」

律「俺、大学に忘れもんしたから1回戻る！」

玲於「そのまま帰ってもいいけど。俺は永久さんが帰ってくるまでここにいる」

律「俺もいる。玲於だけとかずるいもん」

玲於「知らねーよ」

律「すぐ戻ってくるから！」

玲於「はいはい」

律「襲うなよ」

玲於「襲わねーよ。アホか」

ったく、律のやつ

貴女「…ん」

玲於「あ、」

ちょっと声が聞こえた

たまに漏れて聞こえてくるAの声

その声を聞く度に、無性に嬉しくなる

玲於「A、絶対声戻そうな」

Aの過去は俺はどうしようもないけど

これからなら…

俺がAの声を戻してやる

玲於「頑張れ、頑張る」

俺の目標ができた

Aとの楽しい思い出いっぱい作って

Aの声を戻す

Aの笑顔も守る

律とか永久さんとかじゃなくて、

それは俺がいい

この時はまだAに対する想いには気づいていなかった