私、 変わります。

6.鏡越しの人 ページ6

「ありがとうございましたっ」








「こちらこそありがとうございました」







お店のドアを開ける杉野さん。








「また来てよ…今度はもっと上手くなってる
から」






「(笑)今もお上手ですよ？」







「まだまだ！中村さんみたいな一流になる
にはあと何年修行すればいいんだ！？」







指折り数える杉野さん。








本当に面白くて…優しい人。








「絶対、来てよ？」








「はい(笑)その時は杉野さん指名します」









「ヤッター！！！」








ドアの前で飛び跳ねる…子供みたい。








「じゃあ…またね」扉を開けるー。








一礼して数歩目







「…いいじゃん？似合ってる」







振り返れば鏡越しのあの人がが立っていて








「…残念…俺がやってあげたかったのにな…」







「…今度は俺に任せてね？」







そう言ってセットされた髪を無造作に
遊ばせた。








「…こっちの方が良くない？」







鏡越しの人に遊ばせられた髪は







さっきとはまた違った私が出来ていた。







「ホントだ…全然違う…
やっぱ、中村さんには敵わないっす」






笑いながら頭を下げる杉野さん。









…なんか…







…なんか嫌だ…







無造作に遊ばされた髪を整えて







その人を見つめる。







「…私…こっちの方が好きです」







「…ふーん…そう…」







私を見下ろす目は冷めていて








一瞬でわたしの心はシャッターを下ろした。








「…ありがとうございました」







振り返らずお店を後にする。








背中越しの声。







「今度は必ず俺が可愛くしてあげるから」








不思議な人…鏡越しの彼。

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