私、 変わります。

41.尊敬 ページ41

「お待たせ〜」






約束の時間を10分過ぎて

恵梨香はやって来た。





「ごめんね〜仕事長引いて」





「大丈夫…こっちこそ急にごめん」




「(笑)何？急に〜改まっちゃって
注文頼んだ？すみません〜私も同じ
物お願いします」






上着を脱いで






正面に座る恵梨香。






何事もなかったかのように笑っている。





この前のことなんて気にも止めてない

かのように笑ってる。


平気なの…？もう…大丈夫なの？





…いや違う……恵梨香も泣いてんだ。

本当は…泣きたいはずなのに…

俺が泣かせないようにしてんだな…。







「倫也…今日…倫也んち行っていい？」





注文されたコーヒーに


ミルクを注ぐ。


俺を見ずに、微笑みながらスプーンで


かき混ぜている。








「…恵梨香…ごめん」






「(笑)何が？」






「…俺…もう恵梨香の傍には
いれない」





「(笑)何で？」





「…もう…あの頃の俺じゃないんだ」





「(笑)そんなことないよ？ちっとも変わって
ないよ？倫也はあの頃のまんま…
何一つ変わってない…だから…大丈夫」





「…俺変わったよ…」





「変わってないって言ってんでしょっ！」







何で気が付かなかったんだろう…。


あの時の恵梨香も…こんな風に


スプーンを回し続けて微笑んでた。


余裕だな…俺のこと振ってんのにって


あん時は思ってたけど…。


違ったんだな…本当は…







「…恵梨香…ありがとう」






スプーンの音が止まる。






「あん時…俺の背中押してくれて」






真っ直ぐに俺を見つめる恵梨香。





「恵梨香が押してくれなきゃ…
今頃…俺…こんなとこいなかったかも
しれない…」





「…………」






「…俺…やっぱ変わったよ…
うん…変わった。…恵梨香のお陰で
ここまでこれた。…感謝してる」







もう…誰も悲しませない。






「恵梨香…俺は、Aが好き…
だから、恵梨香の傍にはいてやれない
恵梨香…ごめんな……」








店内のBGMが変わったー。






「…倫也」





「…ん」









脱いだ上着を手に取って


恵梨香が立ち上がる。







「…(笑)良い男になっちゃって
…ここ、奢りね？」






「…もちろん」






「…じゃあ…またね」









颯爽と出口に向かう恵梨香は





やっぱり…俺の尊敬する女だった。

42.一件落着？→←40.ブレない

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す