近くて遠い私達 2。

5. ミネラルウォーター ページ5

「……そろそろ離して」






「やだ」






「……人が見てる」






「見ててもいいじゃん」







「……良くないでしょ」







「……仕方ねーな(笑)本当はもうちょっと
抱きしめてたいけど…我慢するか」






「……そうしてくれる？(笑)」







「は〜い(笑)」









倫也ー。







思い出したよ……何もかも。







小さい頃からずっと一緒で







ずっと傍にいてくれた。







あの日ー。







子供を助けようと思って








気がついたらベットの上。







それから……私の記憶はなくなった。









「……思い出した？」







「……ん、……少しずつね」






「……俺の事は？」






「……意地悪で、あまのじゃく……
だけど……本当は凄く優しい人」






「(笑)やべぇ……褒めてくれるなんて
……まだ記憶戻ってないんじゃね？」






「……殴られたい？」






「(笑)うそうそ、ごめん、ごめん。
……思い出してくれたんだな……」






「……ん、思い出した」






「……良かった……本当良かった」






2人でホットココアを頼んで






ベンチに座る。







あれから1年……。







私の頭に浮かんだのは







……なんで今なんだろ。









「……ココア冷めるって」






倫也の言葉に







「あ……ごめん.......」







ココアを1口飲む。







「……生田さんのこと？」







「……え？」






「……付き合ってんだって？
結婚の話も出てるって……姉ちゃんが
言ってた」






「……知ってたの？」






「(笑)……当たり前だろ、実家隣りだし
帰ればいろいろ聞かされるわ(笑)」






「……そうなんだ……」









残りのココアを飲み干す。






……甘いな。







「……なぁ？」







「……ん？」






「……あのさ、いきなりで悪いけど
俺と付き合わない？」






「……え？」







「……付き合ってって言ってんの」






最後のココアは甘すぎた。







喉が詰まる…水あったかな……。








「……ほら、水」







倫也から渡されたのは







私の好きな常温のミネラルウォーターだった。








「……ありがと」







「どういたしまして」






渡されたミネラルウォーターを1口飲む。







喉の奥がスーッとする。







「.......やっぱお前のこと好きだわ」







鼻先を赤くしたトナカイは







照れくさそうに笑った。

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