近くて遠い私達 2。

16. 別れの音 ページ16

「おかえり」





玄関のドアが開いて生田さんが出迎える。






ほんの少し前なら






そんな些細なことが嬉しくて






幸せだと感じてた。







だけど…今は違う…。







苦しくて、哀しくて、どうしようもない







感情だけが私の心を埋め尽くしている。







これから、この人に最低な言葉を






浴びせるのだから…。









「ほら、寒かったろ？急に雨降るしな〜
途中まで迎え行けばよかったな？」






背中越しに聞こえる優しい言葉。







…先生…どうしてそんなに優しいの？







もう…私に…優しくなんかしないで。







「どうする？先に飯食うか？
それとも風呂入る？」






「…先生…」







「寒かったから、先…風呂だな？
お母さんには今日泊まるって言っといたから」






「…………」






「ほら…とりあえずコート脱いで
座る、ほら」






「…ごめんなさい…泊まらない」







「…(笑)…何言ってんだよっ
冗談はいいから、ほら、脱げって」







「…先生…私…」







「…なんだよ？(笑)」









「…別れて下さい」









雨は本降りになって







部屋に聞こえるのは強い雨音だけになった。

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