9話 ページ9
『お酒、ありがと』
「いーえ。、、なんか張り合っちゃったよねえ」
『…?』
不意に落とされた言葉に、地面に続く白線ばかり追っていた頭を上げて彼の方に視線を向ける。
「やっぱ女心とかそういうの理解できてないよなあって申し訳ないきもち〜〜と、カッコつけたい俺のクソダサプライド」
『……そっかあ、それはクソダサだね』
「、、、あからさまに にやにやすんの止めてくんない?」
『これは生理現象だから仕方ない』
へへ、と緩んで落っこちてしまいそうな頬をそのままに、彼の言葉を思い出してはまた笑みが零れる。
周りから見たらバカップルのじゃれ合いかもしれないが、恋は盲目だと言うし、私の世界には彼しか映らないみたいだ。
なんかうれしっ。そう呟いて、帰ったら何食べようかなぁ なんて呑気に考えていれば、
次の瞬間 視界に広がっていたのは整ったイブちゃんの顔で。
柔らかな熱が自身のそれと重なる感覚。
微かに唇に触れた吐息は冬特有の空気とぼんやり混じって、溶けていった。
『へ、』
「やっぱなんもない間違えた」
『ちょお、あの、イブラヒムさん』
「わあわあわあわあ〜はやく帰ろもうさむいって」
『きす!した!』
「うるさいうるさいうるさい」
一気に血液が全身を巡って、体が暑い。頭から湯気まで出てしまいそうな気分。
ストレートな愛情表現なんてできないチェリボだったくせに、そんなの聞いてない。
『なんでちゅーしたのいま!』
「もうやだ何コイツほんとしなきゃよかった…」
『だってタイミング意味分かんないし、そんな雰囲気じゃなかった、、、』
「うるさっ。あー、なんか左手だけ手汗すごいわ。しっとり」
『ぜったいそれ私だけのじゃないからな、ライン超えたぞキス魔』
お互い焦りに焦って、沈黙を避けるために必死に口を動かしてしまう。
甘い空気に耐えられなくて誤魔化すなんて、どこのピュアな高校生カップルだ。
「だれがキス魔だ、おまえのせいな。前までの俺こんなんじゃなかったし全部ちゅーしろ煩いAのせい。おれわるくない」
『…満更でもないくせに。素直になれないもじもじイブちゃんちゃんのために言ってあげてるんですぅ』
「責任転換やば。てゆか、おれだって別にしたくないわけじゃない、し」
と、見事に口を滑らせた後に自分の発言を理解したのか、ついに口を閉ざしてしまった。
真っ赤な耳が何とも可愛らしい。
『、自滅するのやめなよ』
「うるせぇ…」
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作者名:らりる | 作成日時:2022年1月17日 0時