続・やまいの短編集

忙しいの理由 ページ5

１２月。師も走るほど忙しいから師走とはよく言ったもんで、山田は最近とても忙しい。

放課後どころか週末だってバイトに行ってし まい、２人の時間は激減してしまっている。

正直、すごく寂しい。ものすごく。
でもおれが寝る前に必ず電話をくれて、学校だけじゃ足りない時間を補うようにいっぱい話を聞いてくれる、そんな優しさが嬉しくて。

たとえ電話越しで先に寝られたとしても文句なんて言えなかった。

本当は電話なんかじゃ嫌だし、少しの時間でも彼に会いたい。
キスしたいし、その先だって…したいけど。

疲れている彼にそんなこと言えるはずもなく、最近めっきり減ってしまったスキンシップや２人っきりの甘い時間におれの山田への欲求不満は高まるばかり。

それに、日に日に疲れていく彼の体調も心配だし。
無理して欲しくないよ。





『慧、明日バイトないんだ。久しぶりに一緒にいよう。』

寝る前の電話でそんな嬉しいことを言われた。
待ちに待った彼のお休み、まぁ学校はあるから一日中ってわけじゃないけど、やっと放課後一緒に過ごせる。

何日ぶりだろ？１０日くらい？
学校で中途半端に顔を合わせているから、余計に２人きりで会えない時間が長く感じて。

『どこか行きたいところとかある？この前観たい映画あるって言ってなかったっけ？』

…覚えててくれたんだ。その直後に山田が寝っちゃったから、絶対忘れてると思ってた。
嬉しい。それも観たいけど、でも今はやっぱり。

『んー、おれは山田の家に行きたいな。DVD借りてきて２人で観よ？』

いちゃいちゃしながらね。
外に出かけるのもいいけど、やっぱり先に山田補給しなくちゃ。
また明後日からバイトあるんだし、濃密な時間を過ごそうよ。


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