ONE-WAY LOVEs

唇から始まる恋？ ―in― ページ1

『きゃーーーーーー!!』

「「「「「「「うおーーーー！」」」」」」」

テレビの中から聞こえてきた悲鳴とこの楽屋の中に響いた野太い声が交錯して出来た爆音に、思わず顔を歪めた。






メンバー全員での仕事の為、みんなが集合してから早２時間。
どうやら前の撮影が押しているらしい、着替えもメイクも終えたおれ達は時間をもて余していた。


「そう言えば、この前の収録の放送日って今日じゃなかったっけ？」

そう言ったのは多分知念だったと思う。この前の収録と言うのはある局の特番で、有難い事にメンバーの約半数が出演させて頂いた大型番組。

そう言えばそうだねー、なんて言いながら誰かがおもむろにテレビを付けると、ちょうど法律相談所のコーナーが終わる所だった。

"あ、やべ。ここからか"

瞬間的にそう思う。順番からいって次が自分の出た回なのは分かっていたから。

まぁでも多分もうそろそろスタッフに呼ばれるだろうし大丈夫かな。
自分のあの行動がどういう風に編集されてるかは知らないが、なるべく遅ければいい。そう思っていたのに。


「「「えぇーーーーー！！！！」」」

テレビを見ていた数名の、突然の大きな声にびっくりしておれも視線をテレビに移すと、そこに映っていたのは出演者とキスしてるおれ、おれ、おれがいて。
うわ、まさかCM前のあの数秒に自分の映像が使われるとは。
有難い、有難いけど、今は有り難迷惑極まりない。

「え、どうしたどうした？！」

「今ね、いのちゃんがキスしてた！」

そんな会話がテレビ見てた組と見てなかった組の間で交わされ、なんだか気恥ずかしくなってしまう。
あーあ、だから嫌だったんだよ。メンバーの前じゃ全く飾ってない、素の伊野尾慧だから。
こんな仕事モードの自分を見られるのはどうも落ち着かなくて、気持ち悪いのに。


そんなおれにお構い無しに他のメンバーで盛り上がって。
気が付いたらおれを抜いたメンバー８人全員が、テレビの前でスタンバイしてるなんて妙な状況が出来上がっていた。




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