バーコード剥がしてやるよ【まふまふ】

バーコード ページ5

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貴「なんでほっぺにバーコード付いてんの？かな…」






私がそう尋ねると、男の子は少し困った顔をして、苦笑いをした。






「僕にもよくわかってなくて…。数年前、このスーパーにお母さんとお買い物に来て…





お母さんにお菓子買ってあげるって言われたから、このお菓子売り場に来たんだけど、気がついたら、こんなになってて…バーコードも付いてたし。





誰も僕が見えていないみたいだし、僕の声に気がついていなかったし…。




それに、このお菓子売り場から出られないんだ…。」





男の子の説明を、相槌をうちながら聞く。





「…多分今は、僕は“行方不明”ってことになってるんじゃないのかな……」




そう言って、赤い瞳を少しを揺らす男の子。
…そうだよね。辛いよね。





数年間、ずっとここに居て、誰にも見えないから、存在に気づいてもらうことができず…お母さんにも会えてないんだもんね。





私はそっと男の子の頭を撫でる。





よくわかんないけど、私、この子のこと知りたい。





…なんだか、ほっとけないし、この子は誰かが支えてあげなきゃ、溶けてしまいそうで怖い。









貴「…取り敢えず、泣いて。」




「…え？」




貴「私以外の誰にも聞こえやしない。」




「……人の前じゃ、泣けない」




そう言って俯いてしまう男の子。




貴「…じゃあ私はもう帰るから、一人で泣いて？私からの宿題ね。泣けば案外スッキリするよ。」





男の子の頭をぽんぽんして、床に置いていた買い物カゴを手に持つ。





貴「じゃ、また明日来るから…」





ぎこちないかもしれないけど、少し笑顔で男の子にそう言い、お会計を済ませて家に帰った。









______こんなに人の心を理解したくなったのは、人生で初めてかもしれない。

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