聞いてくれ白石【テニプリ】 (ページ2)

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気を利かせた蔵ノ介が、教室にAと謙也の2人だけを残して去っていく。
それから手汗の量が尋常ではない謙也。折角蔵ノ介が作ってくれたチャンスだが、俺にはまだ無理やと座ったままただ一点を見つめていた。

「忍足くん、」

「！はっ、はい？」

「私のヘアゴム知らん？いつもつけてる星ついてるやつ」

「あー…」

一応、椅子の周りを見てみる。Aのことををいつも目で追っている謙也は、どんなヘアゴムかはすぐに頭に浮かんだ。
床には金色の小さい星が付いた、可愛いヘアゴムが落ちていた。太陽の日差しに反射して光っている。

「なあ、A」

「ん～？」

Aは自分の机の中を、しゃがんで漁りながら返事をした。
足から流れるスカートが、普段は隠している肌をちらりと見せる。白い足。

「……」

「忍足くん？」

非常に教育に悪いと思いながら謙也はヘアゴムを拾った。手汗を拭いてから。

「これか？」

「あ、それや、どこ落ちてたん？」

「こなへん…」

「そっかあ、おおきになぁ」

「おん」

謙也は、自分より小さな手の上に星を落とす。ぎゅっと握れば折れてしまいそうな、綺麗な細い指。
Aはその星と謙也を交互に見つめる。

「…な、なんや」

「忍足くんも、星とちゃうかったっけ」

「あ…は？え？」

「えーっと…あ、浪速のスピードスター！おんなじ星やなあ」

「なんっ…」

嬉しそうに、自分と同じ！というAに俺の一番星はお前やとボケをかましそうになるほど謙也の頭は爆発寸前になっていた。

可愛い。可愛すぎるんとちゃうか？こんなんアカンで、ほんまアカンでと脳内でキレ芸が炸裂している。

「お、おっ…おんなじなわけあるかアホ！俺のは浪速や、浪速でスターや、規模がちゃう！」

「あ、ごめん」

「あっ、ちゃうねん、怒ってるんとちゃう…あー……ていうか…どこでそんなん知ったん」

「白石くんが言うてた、アイツは浪速のスピードスターやねんで～言うて」

「白石あいつ…」

Aの口から出る蔵ノ介に少しだけモヤモヤする謙也。この感情の正体は知っている。

「いつか見たいわぁ、忍足くんのテニスやってるとこ」

「…」

「白石くんが上手いって言うてた、テニスする謙也くん格好良いから見においでって」

「…おう…当たり前やろ…」

しかし、褒められるとチョロい謙也はすぐに嬉しくなってしまうのである。