5-5.大脱走 ページ5
あまり良くないとは分かっていながら、俺は何度目かのため息をついた。
レイシフトが完了した途端に聞こえてきたのは、ドクターの悲痛な叫び声。
どうやらまたAと俺たちは分断されてしまったらしい。
何とか現地のサーヴァント、ナイチンゲールと出会った所まではよかった。
その後独立軍のエジソンと対立して、今は地下牢でナイチンゲールが乱射する銃弾にヒヤヒヤしながら途方に暮れている。
｢先輩の判断は間違っていなかったと思います｣
マシュはそう言ってくれたし、俺自身もそう思っている。
でも、後悔が全く無いかと言えば…
｢…うおあ危なっ！？｣
地面で跳ね返った弾丸が一直線に向かってきた。
すかさずマシュが防いでくれたものの、流石にこれ以上放置しておくわけにもいかない。
｢えっと、ナイチンゲール？やっぱり銃で檻を壊すのは無茶なんじゃ…｣
｢いえ、着実に削れています。この調子でいけば2、3年で脱出は可能です｣
｢…俺の聞き間違い？｣
｢いえ、確かに2、3年と仰いました…｣
へなへなと座り込む。
脱出する前に流れ弾で死にそうだ。
そんなに気落ちするなよ、とでも言うようにフォウが前足で俺の腕の辺りをちょんちょんとつつく。
またため息が出そうになった所で、フォウの耳が立った。
｢…フォウ！｣
｢うん？｣
その視線の先には長い長い通路。
暗がりから現れたのは、1人の男だった。
｢銃声が聞こえたものだから何事かと思ったが…なるほど、随分無茶なことをする。だがおかげですぐに居場所が分かった｣
そう言って微笑むと、彼は俺を見て再び口を開いた。
｢君がAのマスターだな。彼女から事情は聞いているよ｣
｢Aさんと会ったんですか！？｣
｢ああ。彼女も我々に協力してくれている。ここに来たのも君たちを助けるためだ｣
随分と手際よく檻を壊すと、彼は俺に向かって手を差し出した。
｢私はジェロニモ。ぜひ一緒に戦ってほしい｣
｢もちろん。よろしく、ジェロニモ｣
俺はその手を取って強めの握手を交わした。
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