5-31.はじまりのおわり ページ31
どうしても戦おうとした私は、ナイチンゲールによって柱に縛り付けられたあげく魔力を使い果たした。
ケルト兵には無類の強さを誇った魔獣達も狂王の前には朱槍の餌食にしかならず、私は介入する術を完全に失った。
結局、私は何も出来ないまま戦いを眺めるしかなかった。
｢これで終わりだ────羅刹王すら屈した不滅の刃。その身で受けてみよ！食らえ！『
｢全呪解放…加減はなしだ。絶望に挑むがいい。
────『
2つの宝具がぶつかり、衝撃波で柱が損壊した。
支えを失った天井は今にも崩れ落ちそうだ。
上を見れば、大きな大理石の塊が降ってきていた。
｢A！｣
今にも泣き出しそうな顔でマスターが叫んだ。
…そんなに悲しまなくていい。
私ならきっと大丈夫。
…そう。
こんな、斯様、な…石ころ如きで壊れるような器ではない。
何せ、
夢を見た。
崩れゆく神殿で一人、私は走っていた。
ここにはもう誰もいない。仲間も宿敵も、皆いなくなった。
最期も独り。私が消えたことに誰も気づかない。
それでも。
落ちていく階段を駆け上がりながら、私は遠のく光へ必死に手を伸ばしていた。
────誰かがその手を取ってくれると信じて。
｢…よかった。目が覚めたね｣
瞼を上げると、真っ白な天井が広がっていた。
降ってきた馴染み深い声はドクターのものだ。
そこでやっと私は自分がカルデアに戻っていることに気づいた。
｢あれ…私、生き埋めになったはず…？｣
｢瓦礫に埋もれた君をナイチンゲールが引っ張り出してくれてね。治療までしてくれたおかげで、君は傷一つなく帰ってきたんだ｣
｢そうだ、クー・フーリンは？みんなは？｣
｢第五特異点は無事修復されたよ。藤丸くんたちも戻ってきてる。ただ…｣
顔を曇らせるドクター。
どうやら無事に帰還とはいかなかったらしい。
少し躊躇った後に彼は口を開いた。
｢マシュが倒れたんだ｣
｢そう…具合はどう？やっぱり大陸横断で疲れたのかな｣
｢違う…違うんだ｣
ロマニはゆっくりと首を振った。
｢君に話しておかなければならないことがある｣
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