5-25.邪魔者 ページ25
誰も気づかなかった。
そもそも、この2人の決闘を邪魔するという考えがこの場にいる者には浮かばなかった。
であれば、
どこからともなく禍々しい朱槍が投擲され、カルナの胸部を容易く抉り、貫き、地面に突き刺さっても。
カルナが膝を折るまで、私たちは誰一人この状況を飲み込めなかった。
｢大体なぁ…こいつは戦争なんだ。背中向けた奴は死ぬ。それだけだろ｣
槍が飛んできた方角からゆっくりと歩いてきたのは、他でもないクー・フーリンだった。
｢貴様…！｣
槍を回収する狂王の背をアルジュナが睨みつける。
｢“何のつもりだ”とでも言いたそうだな？…馬鹿かてめえは。今オレたちがやってんのはルール無用の殺し合いだ。正々堂々騎士ごっこでもやりてぇんなら座に帰れ｣
アルジュナは何か言い返そうとするも、すぐに口をつぐんで俯いてしまった。
さあて、と私達の方へ向き直り、品定めでもするようにクー・フーリンはそれぞれの顔を順に眺めていった。
そして私と目が合った。
｢お前…あの時逃がした女だな。もう1人は…北か。ならまずは後始末からだ｣
クー・フーリンは他には見向きもせず、ノーモーションで私へ突っ込んできた。
咄嗟に私は後ろへ飛び退きながら刀を作り出し、何とか槍の突きを受け流す。
ただ力勝負には当然負けるわけで、私は為す術なく弾き飛ばされた。
骨が軋む音がした。痛みで立ち上がるだけの力が入らない。
咳き込む間もなく追撃してくるクー・フーリン。
私との間に割り込んだマシュを容易く蹴り飛ばし、ナイチンゲールの銃撃をものともせず、ラーマが振りかぶった剣は槍の棘に絡め取られて放り投げられた。
妨害を受けているはずなのに、全く勢いの衰えないまま向かってくる様はさながら重戦車のようだった。
｢お仲間がみんなで待ってるだろうよ。早く逝ってやれ｣
何とか身体を起こして顔を上げると、目と鼻の先に切っ先が迫っていた。
これは、だめだ────
半ば諦めた時だった。
｢美女のピンチに颯爽と登場。ヒーローは遅れてやってくる、なんて誰が言い出したんだろうね｣
耳に響く金属音と共に花の香りが鼻をくすぐった。
そして何よりこの胡散臭さ漂う声は…
｢え、マーリン！？｣
マスターが私の前に立つ彼を指さして叫んだ。
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