5-21.突入 ページ21
揺れを感じて目を覚ますと、私は馬上にいた。
…ここはどこだろう。
いや、その前にどうやって乗ったんだ私！？
よく見ると手綱を握る手が後ろから伸びていることに気づいた。
この緑の布切れは…
｢うおっ、いきなり動くな！落ちるでしょうが！｣
背後から予想通りの声が返ってきて、思わずため息をつく。
｢はいはい、白馬の王子様じゃなくてすいませんね｣
ロビンは悪態をつきながら馬から降りた。
｢ごめんね、Aを支えながら安定して馬に乗れるのがロビンしかいなくて｣
苦笑いのマスターが言う。
ラーマは？と聞くと、｢余はシータ一筋ゆえ、すまぬな！｣と元気に返された。
｢ちなみに、今どこに向かってるの？｣
｢独立軍の本拠地です。エジソンさんにもう一度会いに｣
どうもエジソンの様子がおかしいと言うことで、憑き物を落としに行くらしい。
本人に会っていない私には分からないので、黙ってついて行くことにした。
エジソンの居城の周囲は機械化歩兵が完全に固めていて、忍び込むなんて到底無理だった。
となると、自然と攻め入る形になってしまうわけで。
包帯まみれの右肩は当然使い物にならず、私は宝具で魔獣達を召喚するしかなかった。
失った右腕はいずれ修復しないといけない。
今すぐに出来ないのは、まぁ単にその様子を見られたくないだけなんだけれども…
あまり綺麗なものではないし、見たところで嫌な気分になるだけだ。
そうこうしているうちに機械化歩兵の陣形が崩れ、城内に入り込む隙が出来た。
急いで中へ駆け込み、外の兵達が入れないよう入口を塞いだ所で、私は全身が総毛立つ感覚に襲われた。
この強烈な神気は…！？
マスター達を見ても気づいている様子はない。
…1人の例外を除いて。
いつのまにか増えていたサーヴァント。まだ名前は知らないがきっとランサーだろう。
彼女の赤い目が慌てる私を捉えた。
｢…ほう。お前も気づいたか。流石に神を飼っているだけはあるな｣
｢！？｣
｢ふふ、そう焦らずともよい。私が勝手に見抜いただけだ。マスターから何か聞いたわけではない｣
敵陣の中だというのに余裕の滲んだ笑みを浮かべる彼女は、どこか“彼女”に似ている気がした。
｢…待て。そこに誰かいるな？｣
先頭を走っていたラーマが足を止め、薄暗い廊下の向こうへ問いかけた。
｢ここを通すわけにはいかないのでな。悪く思え｣
その言葉と共に、煌々と燃える炎が現れた。
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