5-19.おかえり ページ19
アルカトラズ島でラーマの解呪を済ませ、追ってきたフィン・マックールとディルムッド・オディナを倒した俺たちに、一本の通信が入った。
｢ジェロニモさん…ではなく、ロビンさんから？繋ぎます｣
[悪ぃ、しくじった。オレ以外は…たぶん全滅だ]
｢全滅…！？あの、いったい何が｣
｢事情は後で話す。悪いがすぐに来てくれ。場所は────｣
｢…ごめん、アタシちょっと向こう行ってる｣
エリザベートは俯きがちに離れていった。
ロビンからの報告を聞き、俺たちの間に重苦しい空気が流れる。
｢みなさん…それに、Aさん、まで…｣
｢Aは大丈夫だよ。きっと生きてる｣
｢先輩…でも、この状況では｣
泣きそうな顔のマシュに俺は首を振った。
大丈夫、Aは必ず戻ってくる。
たとえこの場の誰もが信じなくても。
俺はAを信じる。絶対に見捨てたりしない。
｢仮にあの場から逃げられたとして、だ。アイツはオレのせいで相当の深手を負ってる。追撃されたらひとたまりもない。それに、オレを逃がす時間稼ぎで囮になってる可能性だって…｣
｢それでも戻ってくるよ。ジェロニモにも伝言を頼んだし、Aは絶対に大丈夫。ね、ドクター｣
[ええっ、ボクに振るのかい！？ま、まぁ確かに彼女の生命力はかなり強い。女王の正体が何であれ、相当強力な英霊だろうからね。でも藤丸くん、あまり無理はしない方が────]
｢無理なんかしてないよ、大丈夫｣
俺は食い気味にそう言って笑った。
不自然に見えなかっただろうか。
それだけが心配だ。
Aは心配要らない。大丈夫。
俺は震える手を後ろに隠した。
──その時だった。
｢…マスター、今なにか物音がしなかったか？｣
ラーマが最後まで言い終わるより早く、ナイチンゲールが駆け出した。
咄嗟に俺も後を追った。
｢マスター、早くこちらへ！肢体に一部欠損が見られますが息はあります｣
彼女の声が聞こえた方へ息も絶え絶えに駆け込むと、そこには浅い呼吸を繰り返すAが横たわっていた。
｢A…！｣
｢マス、ター……ちゃんと、戻ってきたよ｣
うっすら目を開けたAは、ゆっくりと俺にガッツポーズをしてみせた。
｢マスター、患者の手を握っていてください。必ず救います｣
俺は目元の汗を拭って、高く掲げられたその左手を強く握った。
｢おかえり、A｣
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