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「あーあー、邪魔するぜ」
突然、式場内に男の声が響いた。
溢れそうになる涙を必死に堪える。
「俺はポートマフィア幹部、中原中也だ」
大人達がざわめき始める。
「一応、此方も招待されて来てんだからな。勘違いすんなよ?…まぁ首領の代理ではあるが」
それは初めて知った。
中也さんの事だから受付の人を脅して入ってきたのかと思ってた。
「というわけだが…まずは2人とも結婚おめでとう。きっと首領も悦んでるぞ」
ニヤリと裏のある笑みを浮かべながら話す中也さん。
本心じゃないのが見え見えだ。
「で、そんな幸せな日に悪いんだが…
「そんな…!」
「Aお嬢様はやっと解放されたというのに…」
あちこちで小さく声が上がる。
…違う。
逆だ。
私は、あの日攫われたから…
攫われたから、解放されたのだ。
攫われたから、中也さんに出会えて────
「全員動くな。何もしなけりゃ、此方も何もしねェ」
そう言うと同時に、中也さんは音もなく1階へ降り立った。
そしてゆっくりと此方へ歩いて来た。
その様子をお父さんが哀しげな表情で見る。
私の目の前に立ったところで、政彦さんが私を庇うように立ち塞がった。
「駄目!政彦さん危ないからっ」
「けどAさんが!」
「私は大丈夫だから!だから…」
私は中也さんに目配せをした。
「自分の嫁1人護りきれねぇなんて…情けねぇ野郎だなァ」
違う。
そう言ってほしかったんじゃない。
私は中也さんを睨んだ。
私の視線に気づいた中也さんは少しだけ困惑の表情を浮かべていた。
「…ほら退けよ。手前に用はねぇんだ」
「っ…」
殆ど倒れるような形で椅子に座った政彦さんは、私に哀れみや哀しみといった感情がこめられた目を向けた。
中也さんの後ろについて、ほんの数十分前に歩いて来た赤絨毯の上をもう一度歩く。
その間も私に向けられる目には、“哀れみ”がこめられていた。
嗚呼、またその目。
その目が嫌いなんだ。
私は哀れんでほしくない。
同情なんかしてほしくない。
いつの間にか涙が溢れていた。
嗚呼、今泣いたらまた勘違いされるのに。
涙も拭わず、その目から逃れるようにして、私は式場を出ていった。
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いむいむ - お母さんすげえ… (2018年6月4日 17時) (レス) id: dc78839770 (このIDを非表示/違反報告)
蘭香 - お母さん怖い…いやまじでこえぇ! (2018年5月20日 2時) (レス) id: 4a14a6da47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:キドホ x他1人 | 作成日時:2018年3月14日 21時