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父は何時だって私の味方だった。

父は私の事を常に優先してくれた。

でも、時にその行動が、発言が、私を悩ませた。

今回だってそうだ。

父は私の事を思って、闇から私を救い出したのだ。

ただ、私はそれを望んでいなかった。

私は闇に染まり過ぎた。

この事を知れば、きっと父は哀しむに違いない。


そんな時は何時も母と話した。

母は何時だって私の味方だった。

母は私の一番の理解者だった。

今回だってそうだ。

私が戻った事を知った周りの皆の反応はこうだ。

『マフィアにずっと囚われていて可哀想だった』
『帰ってこられて本当に良かった』

しかし母の反応はこうだ。

『この家に帰ってきてしまって可哀想だ』
『マフィアに残っていた方が幸せだった』

確かに私はそう感じていた。

でも一言も口には出していない。

何故か母には分かるのだ。


そういえば、小さい頃母に訊ねたことがあった。


「お母様は、如何して私の気持ちがわかるのですか?」

「お母様は魔法を使っているのよ」

「本当は?」

「魔法よ」

「…本当は?」

「…誰にも内緒よ」


そう言って周りに人が居ないことを確認してから、母は私に「実は…」と切り出した。


元はスパイだったそうだ。

1度はそれも嘘かと思ったが、体験談がリアル過ぎて流石に信じた。

勿論、父はその事を知らない。

というよりもこの家の誰一人知らなかったと思う。

幼かった私は何となくでしか理解が出来なかった。

が、今よく考えてみると何だか納得出来る。

私が裏社会の方がしっくりきたのもコレが理由なのかもしれない。

まさにこの親にしてこの子あり…といった所かな。


「A、準備出来たの?」

「あ…もう少し、あと5分だけ待って」


扉の外から母の声が聞こえた。

今日は結婚式の段取りを確認するため、両家族や関係者が一堂に会する日だ。

私は部屋を出る前に首に手を当てた。

私にとって、これ(ネックレス)はもう御守りのようなものだった。

私は十字架を両手でギュッと握って目を閉じた。

特に何かを祈るわけでもなく、直ぐに目を開けて短く息を吐いた。


「…いってきます」


私は扉を開けた。

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設定タグ:文スト , 中原中也 , ギャグ   
作品ジャンル:アニメ
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いむいむ - お母さんすげえ… (2018年6月4日 17時) (レス) id: dc78839770 (このIDを非表示/違反報告)
蘭香 - お母さん怖い…いやまじでこえぇ! (2018年5月20日 2時) (レス) id: 4a14a6da47 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:キドホ x他1人 | 作成日時:2018年3月14日 21時

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