【文スト】重力使いは悪魔な部下に首ったけのようです (ページ21)

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俺にあの資料が本物かどうかを確かめる手段はないが、何となくそんな気がした。

資料には“嵜上A”に関する様々な事が書かれていた。

首領の厚意で中学、高校にも通ったこと。

高校は進学校だったが常に成績は10番以内だったこと。

元は所謂お嬢様口調だったが3日で矯正したこと。

何故そんなことが記録に残ってんだ？と疑問に思う部分もあったが…

本当に…

本当に、何一つ知らなかった。

そして彼奴には────

｢…許嫁…本当にそんなの有るんだな｣

名前は桐島政彦。

これまたヨコハマで1、2を争う大手電機メーカーの桐島コーポレーションの次男だ。

政略結婚なのか何なのかは分からないが、この2社が経営統合でもしようものなら大きなニュースになる。

…が、それ以前に…

Aの奴、許嫁がいたのか…

正直、良い気分にはなれない。

許嫁がいるのに、俺と二人きりで出掛けるような真似を…

怒りなのか落胆なのか、兎に角俺の中で負の感情が渦巻いていた。

そんな時にもう一度着信音が鳴り響いた。

番号を見て舌打ちをした後、渋々通話釦を押す。

｢資料は見てくれたかな？｣

｢…あァ｣

｢まぁ！素直で善い子だね中也君｣

｢用件は何だ給料泥棒｣

｢おやぁ？そんなことを言っていいのかな私に｣

｢…ﾁｯ用件は何だ｣

｢何か聞こえt｢用件は何だ｣

｢実は昨日探偵社に…というか社長に招待状が届いていてね｣

｢招待状？｣

｢何でも、結婚式をするそうだよ｣

｢結婚式…ッ！｣

真逆…！！

｢期日は…えーっと｣

｢何時(いつ)だ！言えッ！｣

｢来週日曜日午前10時から、だそうだ｣

｢来週だと？｣

Aを攫ったのが彼奴の親だったとすると…

結婚させて戻らせねぇ心算か。

｢一応言っておくけど、私はまだ誰の結婚式とは言ってないからね｣

｢逆にこの状況で手前は誰の情報を流す気だ？｣

｢こわいなー｣

｢じゃ、そういうことでー｣と巫山戯た調子で青鯖(太宰)は電話を切った。

俺は直ぐに資料室を出た。