【文スト】重力使いは悪魔な部下に首ったけのようです (ページ19)

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Aが消えた。

家に行っても姿は無く、鍵すら掛かっていなかった。

電話にも出ない。

思い当たる場所を探しても、人に聞いても、何処に行ったのか分からなかった。

そうして何も出来ないまま、1週間が過ぎた。

｢首領、探偵社が紅葉の姐さんを連れ去った模様です。幹部を人質に取られては、我々も迂闊に手出し出来ないかと…｣

｢よし、探偵社の社長を暗殺しよう！そうすれば我々は最小限の労力で敵戦力を削減できる｣

｢了解致しました｣

俺が部屋を出ようとした時、エリス嬢が話しかけてきた。

｢ねぇ中也、今日はAはいないの？｣

｢！｣

Aは俺が首領と話している間、よくエリス嬢の相手をしていた。

だからAが居ないことを不満に思ったのだろう。

｢そういえば…今日神崎君は連れて来なかったのかね？｣

｢…1週間程前から連絡が取れていません｣

首領は少し驚いた表情で｢この時期にか…｣と呟いた。

確かにAはウチ(マフィア)の大事な戦力だ。

こんな大切な時に居なくなれば、かなりの痛手になる。

｢…分かった、中原君は神崎君の捜索を優先しなさい｣

｢はい｣

俺は今までに探した場所をもう一度回ることにした。

｢…居ねェ…何処行ったんだよ｣

Aの部屋に戻ってきて誰も居ないことを確認すると、俺は床に座り込んだ。

勝手に部屋に上がったことに少し罪悪感はあるが、今はどうでもいい。

Aが消えて初めて、彼奴の存在が俺の中でどれだけ大きかったかが分かった。

もう二度と会えないのでは…という考えまで浮かんでくる始末だ。

頭を抱えていると、携帯の着信音がなった。

…知らない番号だ。

｢…はい｣

｢やぁ、君が落ち込んでいると思うと私はとーっても嬉しいよ！｣

｢手前…何故俺の番号を知ってやがる｣

｢それは置いといて…今の君にとても有益な情報があるのだけど、聞きたい？｣

｢何だと？｣

真逆、Aのことか？

何故此奴がそんなことを知っている？

｢彼女には口止めされてるけど、それだと彼女が後で必ず後悔するだろうからね｣

｢手前何を言って────｣

｢中也、君は彼女のことを何も知らない…彼女の名前さえも｣

どういう…事だよ…

｢彼女は神崎Aなんかじゃない｣

｢…？｣

｢彼女の本名(・・)は、『嵜上A』だ｣

俺は耳を疑った。