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次に着いたのは中華街。
流石に食べ物は食べられないから、雑貨などを見て回ることにした。
中也さんは常に周囲を警戒しているようだった。
軍警なのか、はたまた商売敵なのか…
どうでも良いけど…ちょっと気にしすぎだと思う。
折角2人きりで出掛けているのだ、どうせなら何も気にせず────
待てよ。
『2人きりで出掛けている』って…
これって、まるで…
そこで初めて今の状況に気づき、私は自分の鈍さを呪った。
みるみる顔が熱くなっていくのがわかる。
幸い、中也さんは私の後ろを歩いているから、前に進んでいる限りこの顔に気づかれる心配はない。
と、思う。
「A」
「ふぁい!?」
どうしよう、気づかなきゃ良かった。
呂律が回ってないし声も裏返った。
確実に不審に思われているだろう。
「…A?」
「はい、なんでしょう」
前を向いたまま答える。
鼓動が鳴り止まない。
顔も熱いまま。
ゴクリと唾を飲み込む。
「どうかしたのか?」
「いえ、何も」
「…何を隠してる」
「別に何も隠して────」
言い終わらないうちに私は肩を掴まれ、無理矢理後ろを向かされた。
自然に目が合ってしまう。
「っ…」
私の心臓はドラムロール並の速さで動き続ける。
「…熱でもあるのか?」
「ないですっ…」
しかし、中也さんは私の言葉を無視して私の火照った頬に手を当てる。
お、落ち着いてA。
自分より背の低い男は嫌じゃなかったの?
もっと背が高い人…
ほら、太宰さんとかの方がいいんじゃないの?
太宰さんの方が優しそうじゃない?
…なんてことを考えて冷静になろうとするものの、一向に冷静にはなれなかった。
私はトイレに行くという名目でその場を離れた。
幸い、トイレの中には誰もいないようだった。
個室には入らず、顔を洗った。
頭や顔を冷やすように、冷たい水で何度も洗った。
顔を丁寧に拭いてから、前の鏡を見る。
流石にもういつもの顔に戻った。
中也さんはその気で私を連れ出したんだろうから、私だってそれに応えなくちゃ。
「よし」
私は足早に中也さんの元へ戻っていった。
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いむいむ - お母さんすげえ… (2018年6月4日 17時) (レス) id: dc78839770 (このIDを非表示/違反報告)
蘭香 - お母さん怖い…いやまじでこえぇ! (2018年5月20日 2時) (レス) id: 4a14a6da47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:キドホ x他1人 | 作成日時:2018年3月14日 21時