陽だまりの縁側*2 ページ10
お茶はもう湯飲みに入れられていた。乱歩がそんな気を利かせる訳はない。福沢だろう。福沢はもうひとつ湯飲みを持っている。乱歩は、さほどお茶は飲まない。湯気のたつ湯飲みが、二つ余っている。その片方を手にとって、Aは口をつけた。
乱歩は早速羊羮に手を伸ばしている。
が、すぐに彼の動きが止まった。じっと羊羮を見つめて、それからAのものと、福沢のものとをそれぞれじっくりと眺める。
「ねえ」
乱歩が口を開いた。
「そんなに僕が羨ましいなら口で言えばいいのに」
「はぁ?」
Aは開いた口が塞がらない。この名探偵は何を言っているのだろう。名探偵を迷探偵に改名した方がいいのではないだろうか。
「ほら、僕の分半分あげるから、機嫌直しなよ」
Aの混乱を無視して、乱歩は自分の皿の上から一切れ、羊羮をAの皿の上に移動される。
それを見ていた福沢も、自分の羊羮をAの皿の上にのせた。
「えっ、えっ?」
小皿から溢れそうになる羊羮に、Aはさらに混乱した。その頭を、福沢が撫でた。
「事務方を支えてくれている礼だ」
「冷蔵庫のラムネ、飲んでもいいよ」
乱歩も、頭を撫でてくる。
全て、この名探偵にはお見通しだったようだ。
「……じゃあ遠慮なく」
Aは立ち上がって、冷蔵庫まで向かった。
――fin――
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作者名:雪の | 作者ホームページ:https://twitter.com/snow_snow_dream?s=09
作成日時:2018年10月7日 11時