第３９話 ページ14
「それなンだけど……。国木田さん……探偵社の上役に当たる人なンだけど、その人にAちゃんを泊めたことを注意されたんだ」
Aの心臓がドキリと一度、嫌な脈を打った。Aにも、少しまずいことをしてしまったという意識はあったし、それを開き直れるほど図々しくもない。
先日、朝方にここを出たときにすれ違った男の事を思い出していた。ここは武装探偵社の社員寮だ。彼が報告したのだろうか。
事情があったにせよ、谷崎が家に親族でもない女をあげることは問題になるのだろう。それが、依頼人となれば、上司が関係を心配するのは無理はない。
「…………」
Aは谷崎が次に何と言うかわからない。
このままの関係を続けよう？真面目な彼が、上司に指摘されてなにもしないなんてことがあるだろうか。
別れよう？そんなこと、彼が言うだろうか。
Aは、ただ、黙って聞いていた。
「よく考えろッて、云われたよ。だから、ボクなりに考えたンだけど」
Aは唇を軽く噛んだ。
次の言葉が、恐ろしかった。
「一緒に考えたいンだ。これからどうしていくかも含めて。ボクはAちゃんのことを、傷つけたくないし、後悔もさせたくない」
想像以上の言葉に、Aは噛んでいた唇をポカンと開いた。
「本気だから、そういうことを、ちゃんと考えたいんだ」
続く谷崎の言葉にも、Aは呆然としている。
反応の薄いAに、谷崎は恐る恐る訊ねた。
「二人の将来のことを考えてるんだ。おかしいかな？」
不安げに見つめてくる谷崎。Aはそこで自分がただ呆然としていることにやっと気がついた。慌てて答える。
「おかしくないよ、谷崎くんが、そこまで考えてくれてるとは、思ってなくて……」
その先は、Aには言えなかった。言葉にならないものが胸に詰まって、そこから先には進まない。Aの中で形を与えられなかったものたちが、Aの瞳から滑り落ちる。
「嬉しい……。そうだよね、もっとちゃんと考えるべきだと思う」
谷崎は、Aの肩に触れた。
「ボクは、もっとゆっくり進んでもいいと思うんだ。どうかな」
「私も。精神的に追い詰められてて、焦ってたかも」
谷崎の手が、肩からAの手へ移った。互いの体温を感じながら、二人は見つめあう。谷崎が、穏やかに言った。
「二人で、ボク達のペースを見つけていこう」
「うん」
彼の言葉に、Aは微笑みながら頷いた。
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にゃーちゃん - 初コメ失礼します！谷崎くん最推しなので超嬉しいし面白かったです！ (2022年2月8日 9時) (
レス) @page18 id: 04c952a5b3 (このIDを非表示/違反報告)
柘榴(プロフ) - 雪のさん» りょです!ｗ (2018年11月11日 19時) (レス) id: 723d39c3a6 (このIDを非表示/違反報告)
雪の(プロフ) - 柘榴さん» ありがとうございます。公式から発表されていないことに触れることに抵抗のある方もいらっしゃるので、注意書きをしています。 (2018年11月11日 18時) (レス) id: 4ee9ff3c65 (このIDを非表示/違反報告)
柘榴(プロフ) - 夢小説だから過去とかめっちゃ捏造しても問題ない!と私は思う (2018年11月2日 21時) (レス) id: 723d39c3a6 (このIDを非表示/違反報告)
雪の(プロフ) - アカリさん» ありがとうございます。次回作も期待に添えるような作品にできるように頑張ります。 (2018年8月17日 21時) (レス) id: 4ee9ff3c65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雪の | 作者ホームページ：https://twitter.com/snow_snow_dream?s=09
作成日時：2018年6月30日 22時
