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第37話 ページ12

「うん……。」
 谷崎は、Aとの間にあったことを全てナオミに話した。高校時代に彼女から告白されたことも、先日彼女と付き合い始めたことも、今日の騒動も。
「ナオミはどう思う」
 谷崎が問う。彼には妹が、突如現れたAをどう思うか、不安があった。
「嫌と言えば、その方と別れてくださいますの?」
「それは……」
 谷崎は返答に困った。ナオミに反対されると、普通のことなら彼は妹の意思に従う。だからこれに関しては、ナオミに反対してほしくなかった。理想を言うならば、二人とも仲良くしてくれるのが一番だった。
「ナオミとそのAさん、兄様は何方がお大事?」
 またナオミは、無邪気に返答に困る質問を繰り出す。それでも、谷崎は答えた。
「それは……どっちなんて言えないよ。確かにボクは、ナオミのことは、大好きだよ。でも――――」
「Aさんのことも?」
 ナオミが谷崎の言葉を経ち切って、先回りして訊ねた。
「うん。ナオミとは、違う意味でね。大切なんだ」
 ナオミは兄の言葉を噛み締めるように黙っている。そんな妹を見て、穏やかに微笑みながら、谷崎はナオミの頭を撫でた。
 ナオミが俯いて小さく呟く。
「ナオミ、兄様がナオミの兄様でなくなるのは厭よ」
 谷崎の腕に、ナオミが抱きついた。何時もの戯れとは違う、彼を其処へ繋ぎ止めようと、彼にしがみついていた。
 妹の不安を感じ取って、谷崎は安心させるようにもう一度彼女を撫でた。
「そんなこと、なるわけない。ナオミはボクの世界で一番大事な妹だよ。それは何があっても変わらない」
 少し低いところにある彼女の頭に頬を寄せて、軽く口づける。彼にとって、ナオミは紛れもなくかけがえのない存在だ。
「ボクの妹は、ナオミだけだ」
「約束よ?忘れたら駄目よ。忘れたら、許さないんだから」
 キュッと二の腕をつねられて、谷崎は痛ッと声をあげた。ナオミは谷崎の反応を見て楽しそうに笑う。
「兄様の困った顔、素敵ですわ」
 にっこりと、ナオミは綺麗な笑みを谷崎に向けた。そして買い物に出る前のようにはしゃいだ様子で谷崎の腕を引っ張った。
「ねえ、兄様、今度その方と会わせて!私が兄様にふさわしい方か確かめてやるんだから」
 そう意気込むナオミを微笑ましく見て、谷崎は静かに答えた。
「きっと仲良くなれると思うよ。ナオミも、Aちゃんも、優しい子だから」

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設定タグ:文豪ストレイドッグズ , 文スト , 谷崎潤一郎   
作品ジャンル:恋愛
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にゃーちゃん - 初コメ失礼します!谷崎くん最推しなので超嬉しいし面白かったです! (2022年2月8日 9時) (レス) @page18 id: 04c952a5b3 (このIDを非表示/違反報告)
柘榴(プロフ) - 雪のさん» りょです!w (2018年11月11日 19時) (レス) id: 723d39c3a6 (このIDを非表示/違反報告)
雪の(プロフ) - 柘榴さん» ありがとうございます。公式から発表されていないことに触れることに抵抗のある方もいらっしゃるので、注意書きをしています。 (2018年11月11日 18時) (レス) id: 4ee9ff3c65 (このIDを非表示/違反報告)
柘榴(プロフ) - 夢小説だから過去とかめっちゃ捏造しても問題ない!と私は思う (2018年11月2日 21時) (レス) id: 723d39c3a6 (このIDを非表示/違反報告)
雪の(プロフ) - アカリさん» ありがとうございます。次回作も期待に添えるような作品にできるように頑張ります。 (2018年8月17日 21時) (レス) id: 4ee9ff3c65 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雪の | 作者ホームページ:https://twitter.com/snow_snow_dream?s=09  
作成日時:2018年6月30日 22時

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