56 好きな人 ページ26
スポーツドリンクを持ってもう一度寝室に向かうと、さっきよりもちょっとスッキリした顔をしていた。
「冷たいの食べたらちょっとマシになった」
「よかったです!飲み物、ここ置いておきますね」
ベットサイドに置いて、残りは後で食べるって言っていたアイスを受け取る。
「坂本くんたちがAちゃんに頼んだの?」
「いえ、私が届けましょうか?って言いました。今日は他のお客さんがいたのもあって」
「そっか」
いくらカップアイスといえどちょっと溶けてきたから、冷蔵庫に戻しに行く。
寝室からはせき込む音が聞こえて、おしゃべりさせちゃダメだなって。
必要なものは揃っただろうし、回復したらお二人からのお弁当も、そっちに入ってたゼリーも食べられるはず。
「健さん、お話しさせるのも申し訳ないので、そろそろ帰りますね」
「…帰っちゃうの?」
「声出すと喉痛くなって風邪が悪化しちゃいますよ」
「もうちょっとだけ、いて?」
好きな人からのお願いに「いやだ」と言える人がいるなら教えて欲しい。
「じゃあ、もうちょっとだけ」
「うん」
そう答えると、安心したようにベッドの中に潜り込んだ。
まん丸の目だけがのぞいているのが可愛くて、でも病人にそんなこと思ったら可哀想だと、ちょっと目をそらした。
「そういえばAちゃん、この前好きな人いるって言ってたね」
「…はい」
「俺が知ってる人なのかな」
花火大会に行った帰り、健さんのお店の人と話してたとき。
好きな人がいると口に出してしまったとき。
ちょうど健さんがバックヤードから出てきた。
見たことがないような傷ついた顔をした後すぐに笑顔に戻っていたから、本人の前でそんなこと言ってたことも忘れてた。
「…秘密です」
「じゃあ剛かな」
「なんで?」
「見た目怖いけど優しいし、きっとAちゃんを大切にするよ」
「剛さんじゃないですよ」
「そしたら井ノ原くんかな」
「もう、私の話はいいんですよ。そんな健さんこそ、好きな人いるんじゃないんですか?」
ふざけて聞いたつもりだった。
健さんは思ったよりも真剣な顔をして、
「いるよ」
と、答えた。
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いちご(プロフ) - たすくさん» とても好きな作品です。いつか続きが読めることを心待ちにしております…! (2022年1月13日 6時) (レス) id: c0a7076b19 (このIDを非表示/違反報告)
丸メガネ(プロフ) - この小説本当に大好きです。たすく様の続けやすい更新頻度で頑張ってください。応援しています。 (2021年11月27日 13時) (レス) @page32 id: d2b1880b5d (このIDを非表示/違反報告)
さっぷる(プロフ) - たすくさん» 更新とご返信、ありがとうございます!今回も素敵なお話で、益々続きが楽しみになりました!ご自分のペースでゆっくり更新なさってくださいね〜! (2021年8月24日 2時) (レス) id: 0ad332718e (このIDを非表示/違反報告)
たすく(プロフ) - さっぷるさん» さっぷるさん、いつもコメントありがとうございます。やっと更新することができました。これからも楽しんでいただけると嬉しいです! (2021年8月22日 23時) (レス) id: 33661927ce (このIDを非表示/違反報告)
たすく(プロフ) - NAOさん» NAOさん、コメントありがとうございます。そしてお久しぶりです。読み返していただいているなんでありがとうございます...!これからもちょくちょく更新していくので、楽しみにしてもらえると嬉しいです^ ^ (2021年8月22日 23時) (レス) id: 33661927ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たすく | 作成日時:2019年4月28日 17時