親愛なる君へ

月一 ページ4

俺が芸能人だと、アイドルだと気づいてからも、佐々木さんと月一でご飯に行くのは続いた。

気張らなくてよくて、ふとした会話が楽しくて、彼女に惹かれていると気づくのにはそんなに時間はかからなかった。

「この前坂本さんが番組で寄ってたお店、私の会社から近くて。何度も行ったことあります」
「あー、あの木造の家のカフェ？おそこ落ち着くよね」
「つい最近行った時に、テレビに出たんだーって自慢されました」
クスクス笑いながら、どれくらい彼女がそのお店を好きなのかが伝わって来た。

そして、普段なら会社にいる時間なのにOne Dishを見てくれているということはわざわざ録画してくれているんだなと嬉しくなって、思わず顔がほころんだ。

「坂本さん、何か嬉しいことありましたか？」
「...なんで？」
「初めてお会いしたときは疲れた顔してたけど、最近笑った顔をよく見せてくれるから」


確実に笑顔になれる要因は彼女だけど、そんなこと言ったら困らせるかな。

満足そうにご飯を口に運ぶ姿は無邪気で、見ていて安心する。
でもこれ以上、彼女のことを強く思ったらきっと迷惑をかけてしまう。

この月に一回会える関係を続けるには自分の気持ちには蓋をすることが最善策。



それなのに、彼女からの連絡は、回数を追うごとに控えめになった。
そして今日は、店に入る前にキョロキョロと辺りを見回していた。

「誰か知り合いとか見られたらまずい人とかいた？」
「いえ...」
「...最近楽しくなさそうだよね？」
「そんなこと！」

彼女の笑顔が減った原因が分からない。
そういえば、彼氏っているんだっけ？
最近できたとか？
彼氏がいるのに男と二人で会うのはまずいか。

そういうことかもしれない。
店先で俯いてしまった彼女に向き合った。

「佐々木さん」
「はい...」
「もう会うのやめよっか」

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