親愛なる君へ

手紙 ページ20

あれから何年経ったんだろう。

ルイが色々とバラしてしまったおかげで、俺たちはまた付き合い始めた。

前よりもたくさんのことを話して、不安や悩み、楽しかったことまでたくさん共有できた。

一緒に仕事をすることも増えて、健とはファッションについての対談をしたりしてた。
付き合ってることを言ったらひっくり返るくらい驚いていたけど。


そして、ゆったりと2人の時間が流れていく。


「...昌さん、これ何？」

ある日、俺の家でのんびりしてた時。
コーヒーを淹れようとした彼女はキッチンから封筒を持って来た。

「なんだ？それ」
「宛名が私になってる。」
「...あっ！」

戸棚に仕舞い込んでたその手紙の存在を思い出して、慌てて彼女の手から取り上げた。

「なになに？気になる！」
「いや、これはもう必要ない」


彼女と別れて2年ほど経った時。
稽古でちょっとつまずいた。
恋人同士の演技ができなかった。
心が見えない、とまで監督に言われてしまった。

その時に、これを区切りに、彼女との最後にしようと手紙に思いを書き殴った。


会えないのはわかってる、でも会いたい。
泣いていないかな、ちゃんと笑ってるかな。

素敵な毎日をありがとうって伝えたい。
それはできないからせめて、ここからAがいるところを想う。

今もAを想ってるけど、前に進むよ。


そんな当時の気持ちがこの手紙の中には詰まってる。
確か、俺たちの出会いから想っていたことを振り返りながら書いた。


でももう。
Aは俺の隣にいて、そばで笑っててくれる。


ほら、今日もこうして、

「もうわかったから、昌さんもコーヒー飲まない？」
「うん、もらう」

満面の笑みを見せてくれるんだ。


Fin.

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