生意気な後輩と９日目 ページ9
夕飯やお風呂も済ませ、友達とのメールもひと段落着いたところで寝ようかと布団に足を踏み入れると窓の外が光って雷の音が耳に飛び込んできた。
「う、うそ…」
震える身体を守るかのように布団にくるまるも雷が止む様子はなく、また私に眠気が戻ってくる様子もなかった。
雷が大の苦手な私は、涙目で布団にくるまるしかできなかった。
この歳で親は頼りたくないし、友達にまた連絡するのも申し訳ない。
もうひとり思いついた相手に私は小さく頭を横に振った。
「あいつだけは、ない」
貸しを借りるようなことしたくないし、何よりも雷が苦手なことを知られるのが恥ずかしいし悔しい。
はやく寝なきゃ、なんて目をつぶると部屋の扉を叩く音がした。
「…誰？」
布団の隙間から顔を出すも誰かわかるはずもなく。
雷の音も相まってすごく怖くなってしまいもう一度布団にくるまれば扉が勝手に開かれる。
びく、と揺れる肩に震える身体を、揺れる瞳。
涙を一粒こぼして再度目をつぶれば、馴染みのある優しい手の感触と声が聞こえた。
「雷怖いくせに我慢すんなや」
「っ…」
「お姉ちゃんの威厳のために今日だけ知らんふりしといたる。優しい弟に感謝せえや？」
布団越しから伝わる柔らかな声と頭を撫でてくれる手が何だかくすぐったくて温かくて。
怖いはずの雷の音は私の耳には届かなくなっていて、かわりに心臓の音がうるさかった。
「ちーの、く＿＿」
「知らんふりする言うんやからはよ寝てや」
「…おやすみなさい…」
「…先輩の声聞こえた気がするけど幻聴やろか」
まぁええか、と呟けばこう言葉が帰ってきた。
「おやすみなさい、お姉ちゃん」
まるで子供のようになった気分で目をつぶった。
次の日の朝、なんて何も知らないふりをしていつも通り接してくれた彼に少しドキッとしたのは私だけの秘密です。
「フレンチトーストもーらいっ」
「あっ…ラスト1個やったのに…！」
「はよ食べん方が悪いんですぅ」
だけど食べ物の恨みは怖いんだよ！
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 842人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
芽樹。(プロフ) - 「かぎかっこ」さん» ありがとうございます。｢かぎかっこ｣さんのコメントが嬉しくてこちらまでにこにこしてしまいます。こちらこそいつも癒しをありがとうございます。ゆっくりではありますが、お待ちいただけたら幸いです。 (2019年9月20日 1時) (
レス) id: 4dfb0739ae (このIDを非表示/違反報告)
「かぎかっこ」(プロフ) - 完結おめでとうございます。お疲れ様でした！最初から最後まで2人が可愛くてずっとニコニコしながら読ませて頂きました。癒しをありがとうございます！次作も楽しみに待っておりますので、芽樹。さんのペースで頑張って下さい。応援しております。 (2019年9月19日 15時) (レス) id: af5934532f (このIDを非表示/違反報告)
芽樹。(プロフ) - まうるさん» コメントありがとうございます。ciくん沼へいらっしゃいませ！これからもciくんの魅力を伝えられるように頑張ります！ (2019年8月29日 7時) (レス) id: 4dfb0739ae (このIDを非表示/違反報告)
まうる - ciくん沼にハマってしまいましたわ.....ありがとうございます (2019年8月29日 2時) (レス) id: a48c43d4d7 (このIDを非表示/違反報告)
芽樹。(プロフ) - ソルティングさん» いえいえそんな！改めてリクエストありがとうございました。励みの言葉とても嬉しいです…！頑張ります！ (2019年7月15日 5時) (レス) id: 4dfb0739ae (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：芽樹。 | 作成日時：2019年6月10日 20時
