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おはよう ページ29

また、いつもと同じ朝が始まった。
スマホのアラームを止めて、寒いなぁ、なんて布団の中で縮こまる。
こんなことしてる場合じゃないのになぁ、となんとか身体を起こす。

「あ、やっと起きた」
「やっとって…これがいつも通りです…」

…あれ、待って。

顔をあげれば私の身体の上に布団を挟んで、見覚えのある男性が鋭い歯を見せて笑っていた。

「…なん、で…」
「なんやその間抜けな顔」

いつもの調子で答えられると逆にこっちが狼狽えるというか。
これ、もしかして夢なのかな?

「…あ、これ現実やで?」

…デジャヴ感が否めないのですが。

ひとり狼狽えていると彼の腕が伸びてきて私の頬を掴んだ。

「…いひゃい」
「ほら、現実やろ?」
「わ、わかりましたから…!」

そう言えば満足そうに微笑んで手を離してくれる彼。

「あの、えっと…」
「ん?」
「お、お久しぶりです…」
「久しぶりやね〜」

こんなことを言いたいんじゃなくて…!
ふるふると首を横に振る。

「き、消えちゃったんじゃないんですか…?」

そう言えば嗚呼、と声をあげると

「まあ、消えたけど。だって俺はやらなきゃいけない役目、使命を破ってもうたしなぁ」
「それならなんで…」
「でもそれはAの世界…ええと、地上でだけ。俺自体は消えてへんで」

「じゃあ…重い罰って…あったんですか…?」
「まぁ一応罰はあったで」
「…どんなのか聞いてもいいですか?」
「死神ってさどうやってなるかっていう経緯は省いて、ある程度の役目を終えたら人間に生まれ変わるんよ」
「えっ…そうなんですか」
「おん。やけど俺にはその権利を無くされた。一生死神ってことやね」

平然と答える彼に思わず目を見開く。

「な、なんでそんなに平然としてるんですかっ…!」
「なんでって…別に俺人間になりたいわけじゃなかったし、死神嫌いやないしね」
「それでも一生死神でいるなんて…」
「もう、ええんやってば!それにこれは俺が望んでやった事なんやから」

そう言って気づけば私はゾムさんの胸の中に収まっていた。

「A、おはよう」
「…おはようございます、ゾムさん」

涙ぐんだ声でそっと抱きしめ返した。

作者から:補足説明→←×××



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若草 翠 - 素晴らしい作品でした。主人公の感情が痛いくらいに伝わってくる文章の書き方で、スッキリとした終わり方が印象に残っています。これからも頑張ってください! (2022年4月6日 21時) (レス) id: 3991d49295 (このIDを非表示/違反報告)
芽樹。(プロフ) - 神野里彩さん» はじめまして。ご丁寧にありがとうございます。そう言っていただけると私も書いてよかったです…!少しでも心に残る作品になってくだされば私も嬉しいです…!こちらこそ改めて読んでいただきありがとうございます。 (2019年7月29日 2時) (レス) id: 4dfb0739ae (このIDを非表示/違反報告)
神野里彩 - 初めまして。こんにちは。貴方の作品がオススメに出てきたので読んでみました。普段あまり感動する映画とかで泣かないのですが、最後まで一通り読み終わったら涙が止まりませんでした。芽樹さんとても素晴らしい作品を読ませて頂ありがとうございました。 (2019年7月28日 15時) (レス) id: 1e17a0cebe (このIDを非表示/違反報告)
芽樹。(プロフ) - フラルさん» そう言っていただけて嬉しいです!お読みいただきありがとうございました! (2019年7月12日 8時) (レス) id: 4dfb0739ae (このIDを非表示/違反報告)
フラル(プロフ) - 評価が1回しか出来ないのが悔しくなるほどとても素晴らしい作品でした!!!どのエンドも感動しました! (2019年7月11日 0時) (レス) id: 8607e8bac4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:芽樹。 | 作成日時:2019年1月7日 23時

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