あと3日 ページ19
いつもは気持ちの良い太陽の光も今は頭痛を引き起こすだけのものになっていて。
おぼつかない足でなんとかカーテンの近くまで行きカーテンを閉めたところでようやく気づいた。
いつもの『おはよう』が聞こえない。
もしかして、見えなくなっちゃった?
それとも愛想つかしていなくなっちゃった?
なんて考えていたのも束の間でキッチンから何かを落とすような音が聞こえた。
キッチンから物音がするということは、私を除いてひとりしか当てはまる人物はいない。
壁に手をついてなんとか歩いてキッチンに扉を開けば、あ、と声をあげる彼と目が合った。
手に小さなお鍋をもって。
「ふふ、おはようございます死神さん」
「…おはよ」
照れたように顔を背けるも、手に持ったもの隠すのは諦めたのか味の保証はせぇへんで、と言って机の上にお鍋を置いてくれた。
中身はおかゆなのだから、味も何もないのだけれどきっと料理をしたことない彼にとっては不安で仕方ないのだろう。
「ありがとうございます」
そう言うと嬉しそうに目を輝かせてからはっとしてまたそっぽを向いてしまった。
「いただきます」
手を合わせてからスプーンで掬ってふぅ、と軽く息を吹きかけてから口に運ぶ。
水が少なかったからか少し固めだが、死神さんが私のために作ってくれたのが嬉しくて、今まで食べたどの料理よりも美味しく感じた。
「めちゃめちゃ美味しいです」
「お世辞はいらんよ」
「本当にです…!本当に美味しいです!」
「なら、まぁええけど…」
俺部屋戻ってるから食い終わったら呼んで〜、と部屋を出ていく彼。
あっ、洗い物自分でやろうとするなよ!と付け足して。
今日は彼に甘えてゆっくりしようかな、なんて。
ちら、とキッチンの方を見ると焦げたお鍋が見えて。
彼の頑張ってつくる姿が目に浮かんで、思わずふふ、と笑ってしまった。
「…ありがとうございます、ゾムさん」
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若草 翠 - 素晴らしい作品でした。主人公の感情が痛いくらいに伝わってくる文章の書き方で、スッキリとした終わり方が印象に残っています。これからも頑張ってください! (2022年4月6日 21時) (レス) id: 3991d49295 (このIDを非表示/違反報告)
芽樹。(プロフ) - 神野里彩さん» はじめまして。ご丁寧にありがとうございます。そう言っていただけると私も書いてよかったです…!少しでも心に残る作品になってくだされば私も嬉しいです…!こちらこそ改めて読んでいただきありがとうございます。 (2019年7月29日 2時) (レス) id: 4dfb0739ae (このIDを非表示/違反報告)
神野里彩 - 初めまして。こんにちは。貴方の作品がオススメに出てきたので読んでみました。普段あまり感動する映画とかで泣かないのですが、最後まで一通り読み終わったら涙が止まりませんでした。芽樹さんとても素晴らしい作品を読ませて頂ありがとうございました。 (2019年7月28日 15時) (レス) id: 1e17a0cebe (このIDを非表示/違反報告)
芽樹。(プロフ) - フラルさん» そう言っていただけて嬉しいです!お読みいただきありがとうございました! (2019年7月12日 8時) (レス) id: 4dfb0739ae (このIDを非表示/違反報告)
フラル(プロフ) - 評価が1回しか出来ないのが悔しくなるほどとても素晴らしい作品でした!!!どのエンドも感動しました! (2019年7月11日 0時) (レス) id: 8607e8bac4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:芽樹。 | 作成日時:2019年1月7日 23時