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次の日からも、私の高校生活が花を咲かすことはなさそうだった。
いつもと変わらない、平々凡々とした日々。楽しいかといえば、そうではなかった。
けれど、放課後の時間だけは違う。
あの日から、私と千切くんはあの場所で会えば談笑するくらいの仲になった。もちろん、クロも一緒に。
気づけば、それが日課のようになっていた。そして、私が一日の中で一番楽しみだと思える時間になっていた。
もちろん彼は何かしらの部活をしているので、私と帰ってくる時間が違ったりする。
なのでたまに会えない日もあるけれど、そんな日は仕方ないと割り切れる。また明日会えるかもしれないと思えた。
私は中学生の若かりし日から初めて、新しく友だちができた気がした。
「あれ、雨かな」
家への帰りにふと地面を見てみると、所々に水が染みた跡がある。
薄暗く曇った空を見上げ、手を上に逸らしてみると、小さく水の感覚がした。
もう六月も下旬に入り、この国特有の梅雨という気候がやってくる。いや、もうとっくに来てはいるが。
最近やっと降らなくなったと思ったら、まだ梅雨は本領を発揮していないらしい。
考える間もなく水滴の量を増していく空に少し驚きながらも、駆け足で家に向かった。
家に着き、扉を開いてみればいつも通りの様子が広がる。
私はできるだけ濡れないうちに、と早めに玄関に入り、扉の鍵を締めた。
帰ってきたのが降り始めで良かった。
天気予報はちゃんと見ておくものだと痛感する。
最悪、雨で制服も髪もびしょ濡れだっただろう。
私はホッとしながら少し濡れてしまったベストを脱いで、ハンガーにかけた。
「今日は何かやってるかな」
テレビのリモコンを持って電源をつける。
何かやってるかとは言っても、この時間帯は何もやってない。断言できる。
バラエティ番組とか体張った企画の番組は、大抵夜七時頃にやる。
テレビ常連の私からすれば常識のことだった。
そしてチャンネルを順番に変えていたその時、とあることに気づいた。
「……クロ?」
クロがいない。探さなくてもわかる、あの気配が全くない。
普段から静かすぎる家が、昨日とかよりも格段に静かだ。
クロが室内にいないこと。私はそれに強く疑問を持った。
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作者名:エネマリ | 作成日時:2023年4月2日 19時