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……確かに偏差値は低いわけじゃない。なんなら高いとすら思う。


だけど、だからこその欠点がある。
意識が高くて、自分の意見を他人に良くも悪くもぶつける、そんな人が多い。自分に自信を持ってる。
だから私みたいな人が行くと逆に馴染めない。生半可な気持ちではいれないということ。


私はそれが窮屈でしかたなかった。私には彼らの持つものがないから。
持ってるものといえば、同じくらいの学力だろうか。


思い浮かべるのすら嫌になって、すぐに思考を現在に戻した。
そして私のことから離れるように、話題を彼に移した。


「千切くんはどこの高校なの?」


「羅実。あっちの方の高校」


千切くんはジャージにプリントされている学校の名前を指差しながら、私に教えてくれた。


羅実って、確か羅古捨実業高校の略だった気がする。あまり私は聞いてこなかった高校だけれど、割と近くにあるのかもしれない。


彼の話に耳を傾け、少しぼんやりとそんなことを考えていると、また違った声が私を呼んだ気がした。


『ニャー』


「……あれ、クロ?」


クロの声が聞こえたと思い、先程いた場所に目を移すも、そこにあの黒い姿はなくて。
それに気づいてあたりを見回せば、金色の目が後ろにあった。
顔はこちらを向いているけれど、体は後ろの方を向いていた。


後ろの方に進めば家があるから、きっと帰ろうと私に呼びかけているのかもしれない。


「ど、どうしたんだろ」


「帰ろうって言ってんだろ。じゃあまたな、A」


私が考えていると、千切くんも一言告げたあとこの場を去って行ってしまう。


「う、うん。じゃあね千切くん」


私もつられてそんなことを口にした。
そしてすぐに塀の上を行くクロの隣につく。


またな、なんて言われたのはいつぶりだろうか。私自身も久しぶりに言った気がする。


私達クロ繋がりで偶然会っただけに見えるのに。
高校も違うし、何も接点なんてない。
昨日会ったばかりだけど、不思議な関係性だと感じざるを得なかった。


「クロがあんな男の子と会ってたなんてね」


私がそう話しかけてみても、クロは何も答えずに塀の上を軽やかに歩く。


その時ばかりは高校選びを間違えたことも、委員会に入ってを後悔したことも、全て忘れられた。



青から赤く変わっていく、不思議な空の下。
私は初めて、一人と一匹で家へ帰った。

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作者名:エネマリ | 作成日時:2023年4月2日 19時

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