その黒猫、うちのです【千切豹馬】 (ページ20)

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「うん。じゃあ応援しに行くね」

「おう。絶対驚くから、覚悟しとけよ」

そう言う彼に、私は笑顔で頷いた。

前にあったうちの学校の体育祭でも足が驚くほど速い人さ何人かいたけれど、それよりも果たして速いのだろうか。

千切くんがゴールを決めるところも見れたらいいな。

土日は出かけるってことを、親にも言っておかないとならない。
クロも本当だったら連れていきたいけれど、それはできないだろうから。

素知らぬ顔をするクロを横目に、私はそんなことを思った。

私もいつか、彼のような自信を持てるように誇れることを見つけられたらいいんだけど。

「じゃあまた今度。絶対行くから！」

私はそう彼に手を振ってその場を後にした。
彼もさり気なく手を振り返してくれた。

私が家に進んでいると、塀を伝ってクロも隣りにいた。

「残念だねクロ。猫は行けないよ」

私が話しかけると、いつもはシカトするクロが珍しくこっちを見た。
金色の瞳で、じっと私を見つめている。

残念な報告をしたからこんな反応なのだろうか。つくづく人間みたいな子だな。

「何、もしかして羨ましい？」

『……にゃー』

私がそう聞くと、クロは猫語で何か答えて再び前を向いた。

なんて答えたのかはわからないけど、クロのことだしきっと素っ気ない返事をしたんだろう。

というか、こんな展開になるなんて思わなかった。

スポーツとか全く縁がなかったし、ましてやそれに誘われるなんてこと今までに何回あっただろうか。指で数えられるくらいだと思う。
自分のことながら悲しすぎて胸が痛くなる。

今更ながら、あの時クロを探し回って良かったと感じる。
そうでなければ、きっと彼には逢えていなかった。

もっと遡ると、クロをうちに迎え入れてなかったら他校の彼とも逢えていなかっただろう。

私が千切くんと出逢えたのは、全部クロのおかげだ。

今では彼がとても大切だと思える存在にまで成り上がっているし、彼と会うのが一日の楽しみになっていたりもする。

間接的に、私はクロに救われている。

「ありがとね、クロ」

そう呟いた言葉も、きっと私の言葉をわからないクロには、伝わらないことだ。