その黒猫、うちのです【千切豹馬】 (ページ1)

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夕日によって橙色に染まった道を歩く。
暖かな日が私を照らす中、私はカバンを背負って学校から帰っていた。

私は高校一年生で、今年新たな学び舎へと進んだひよっこだ。
この道も少し前までは新鮮だったが、すぐに慣れてしまった。

あのときのドキドキした気持ちはなくとも、この道を見て安心できるようになった。

新しい生活環境はどこか不安が多くて、慣れることができなかった。

内気で大人しいこの性格と、人見知りと言う特徴もあってか友達は全然できない。話しかけようとしても、何を話したらいいかわからなくなってしまう。

そんな日々の中でも、この帰り道だけは私を不安から消し去ってくれた。
なんだかここだけは、私が一人でいてもいいと言ってくれている気がして。

私は一軒の見慣れた家の前で足を止め、制服のポケットから鍵を取り出した。
鍵をドアの鍵穴に挿して捻ると、『ガチャ』という音が鳴る。

ドアを開けば、電気も付いていない物静かな家の中が目に入る。

「一人って、寂しいものだな」

そう寂しげに呟いた声が、家の中に響いた。
それをかき消すように玄関の鍵を閉め、私はすぐに居間に足を運んだ。

電気を付けた後荷物を置いて床に座り、一息つく。

今日も今日で頑張れた。不器用で冴えない私はクラスでももう陰の存在と化していて、ほとんど一人なのは普通だった。
所謂、モブキャラクターと同然。

でも部活は帰宅部だから、授業が終わって帰りのホームルームをしたら家に一直線。
変に部活でやらかさないで、こうやって一人でいる時間に身を移せる。

けれど私は委員会に所属しているので、たまに少し遅い時間に帰ることもある。
自分でもなんで立候補したのかわからない。何もできないのに。

なんとなくテレビの電源を付け、雑音に浸る。
こうやって画面越しに何か話してるんだったらよくわかるのに、目の前で話されると意味がわからなくなる。

私の人生に色が付くことはないのかな、なんて。

少し寂しいことを考えた。

「生きてるだけで偉いなんて、そう簡単には行かないよ……」

最近どこかで聞いたそんな言葉。

確かに生まれた以上、生きてるだけで偉いのかもしれない。
でも生きてる上で何かしてる人がいるこんな世界で、そう考えることは難しかった。

こんな私でも人だから、何かして自分を変えたいという意欲はあるけど、それを実現できないからこんな始末になってる。

私は小さく溜息をついた。