桜吹雪《紫》 (ページ3)

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一向に思い出すことの出来ない思い出。

空を見ても、私の病室に立ち交う人々を見ても思い出すことは出来そうにない。

思い出すのが、怖いのかもしれない。

過去に残された苦しい思い出が私のどこかでサイレンをあげている。

毎日来る濱田さんに相談を乗ってもらいながらも苦しくなって、辺りが真っ暗になった頃には大声をあげて泣いてしまう。

濱田さんは、私の闇を知っているのかもしれない。

私も知らない心の闇を。

私に気を使ってくれて、笑って何も言わないのかもしれない。

それとも、私に言えない何かがあるのか。

翌日

ベッドのすぐそばにあるソファに座っているとこんこん、とノックが鳴ったあとにがらがら、と引き戸が開いた。

テーブルを挟んで向かい側のソファに座った男の人はすぅ、と息を吐いた。

初めて見る人だ。

こんがり焼けた肌に丸い大きい目。

「初めまして。桐山照史って言います。」

見た目とは対照的な柔らかい声。

「濱田って、知っとるかな。その人の友人。もっと言えば、親友で幼馴染です。」

「藤川Aちゃん」と私の名前を呼ばれ、少し背筋を伸ばせば、「そんな緊張せんでええよ」と笑っていた。