黒の扉（番外編） ページ5
山崎side
「おはようございます」
自分のように起きてきた隊士たちに挨拶をし、顔を洗いに行く。
なぜかは分からないけど朝は少し憂鬱になる。
青く晴れた空も、鳥の鳴き声も、道行く人々も全てがうっとおしく感じる。
だけど、一応今日も仕事があるわけだから頑張ろう…と思う。
まぁなんだかんだあの人に褒めて欲しいだけなんだけど。
「おい山崎、電話だ」
そうこうしていると土方さんが俺の事を呼んだ、俺に電話なんかかかってくるのは相当珍しいことだ。一体なんだろう。
いや、思い当たる節が無いわけじゃない、ただあの人が電話をかけたところで声でバレて終いだろう。
「おい山崎！はやくこい！」
「あっ、はい副長！」
急いで副長のいる電話までかけて行く、電話をとり、受話器を耳にあて「もしもし」と声を発する。
『あぁ、山崎か？俺だ』
「！ なんの御用ですか…？」
声でわかる、【正真正銘】あの人だ。この声は真選組なら、しかも副長なら何回も聞いてるはずなのになぜ気づかない？不思議で仕方が無い。
『おい、聞いてるか？』
「あ、は、はい！」
『お前は考えすぎるとこがある、直せよ。 まぁそこもいいと言えばそれまでだがなぁ…？』
あぁ、また言われてしまった。自分でも直さなければとは思っているのに。
『まぁそんなことはいい。それより…だ。今日の夜、来てくれないか？少し話したいことがある。』
「大丈夫だと思います、なんでしたら今からでも行けますけど…」
『そうか、じゃあそうしてくれ。
早い方がいいからな』
「はい！」
そんな会話をして電話は切られた。あの人の所。楽しみで仕方がない。
今すぐに準備をして向かおう。
列車に乗り、何分かすればあの人がいるところにつく。
門の前であの人が待っていた。
「あぁ、来たか山崎。入れ」
そう促されるまま門を潜り、中に入る。
「なぁ山崎？そろそろもう何人か仲間が欲しい。と思わないか？」
「俺は別にどちらでもいいですけど、あなたがそうしたいなら…」
我ながら、俺はどれだけこの人が好きなのだろうと思う。
まぁでもそれはそれでいいだろう、それを許したのはあの人なのだから。
「しかし山崎、お前も従順になったなぁ？」
「やだなぁ、誰のせいだと思ってんですか。あんたのせいでしょうに」
少し笑いながらそんな会話をする、こんな時「あぁ幸せだ」と思える。
これが一生続けばいいのに――
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作者名：すもも | 作成日時：2019年3月18日 1時
