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二次会に行く友達たちと別れ、夜に沈んだ池袋の街を駅に向かってぽてぽてと歩く。空には満天の星が瞬いていた。
今は八時三十分。十五分後に川越行きの快速電車がやって来るけど、間に合わないのは目に見えていた。
次は九時四分だけど、これも間に合いそうにない。結局二十三分発の電車に乗ることにした。指扇の駅に着くのが十時過ぎになるけど仕方ない。
「鈴原さん!」
振り向くと、星海さんが立っていた。
「星海さん。二次会に行ったんじゃないんですか」
「奇数になるし、面倒だから抜けてきたんスよ」
「家、何処ですか」「指扇のアパートです」「俺も指扇に借りてるんですよ」「もしかしたら隣同士かもしれませんね」「一緒に帰りませんか」「いいですよ」やりとりしながら、私と星海さんは横並びでネオン街を抜けていった。
駅に着いて改札機にSUICAを通す。階段を降り、ホームに電車が滑り込むのを待った。会話はない。隣の星海さんをちらりと見上げる。彼は手扇で顔に風を送っていた。
気づいて微笑みを向けられる。合コンで見せた無邪気な笑顔とは違う大人びた表情に、キュンと胸が高鳴った。
酔顔がさらに赤みを帯びた。気づかれないように、顔をうつむかせる。白タイルをぼんやり眺めていると、星海さんが口を開いた。
「鈴原さん。もうすぐ電車が来ますよ」
私は顔を上げた。女声のアナウンスがホームに響く。
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作者名:ナツメグ | 作成日時:2020年4月16日 18時