[HQ] 瑠璃色の春 [星海光来] (ページ1)

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「カンパーイ！」

　ビールジョッキをかかげ、男女八人はキンキンに冷えた液体を喉に流し込んだ。

　此処は池袋のとある居酒屋。立教、早稲田、上智大学に通う男子学生と女子学生が座敷席で合コンをはじめたところだった。

　私はトングを取ろうと手を伸ばすが、それより早く上智生の女二人が奪っていった。必死だなぁ、と何処か他人事のようにそっとため息を吐く。

　それぞれ自己紹介を終え、おかわりを頼み、野菜や肉をトングで足し、趣味や地元の話で盛り上がる。

　大人数は苦手だけど楽しいな。

　思いながら、笑顔を浮かべ、適度に相づちを打つ。ときには話を振り、振られ、盛り下げないように気を遣った。

　前に座る星海さんが席を立った。靴をつっかけ、黒タイルを進んで男性用トイレにはいっていく。後ろ姿を目で追っていると、桃色のカーディガンの裾を引っ張られた。

　友達が耳元で囁く。吐く息は酒臭かった。

「A、あの早大生とめっちゃ盛り上がってたね。星海さんだっけ？」

「うん。スポーツ科学部に在籍してるんだって。バレーボールやってるらしいよ」

「へぇー、そうなんだ。いいね、スポーツ少年」

「ねぇ、そろそろ席替えない？」

　上智生の女のひとりが言った。私たちは頷き、星海さんが帰ってきたタイミングで席替えが行われた。

　星海さんは友達の前に座った。私の前には、違う学部に在籍する立教生の男が腰をおろした。