第六話 ページ8
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『お久しぶりです!芥川先輩!!』
入室してきた芥川先輩にいきなり抱きついても、彼は私を引き剥がすことなどしない。
存分に久しぶりに見るその顔を眺める。
「久しいな。元気にしていたか?」
そう言って頭を撫でてくれるのが嬉しくて、じゃれつくかのように彼の胸に頭を擦り付けた。
私が気を許している人の中で1番歳の近い、兄のような存在。それが芥川先輩だ。
しばらくそうしていると、芥川先輩はやんわりと私の肩を押し、身体を離す。
少し名残惜しい。
しかし、それもすぐに消え去った。
「それで、
『あぁ、そうでした。説明しますね』
ドアの側から、自分の執務机に戻る。
椅子に座って一つ深呼吸。
意識が切り替わる。
『遊撃部隊にやって欲しいのはただ一つ。人虎を捕まえて下さい。奴には七十億の懸賞金がかけられています』
「特徴は」
疑問を呈することなく、任務を遂行する為に特徴を聞いてくる。彼のそういうところも私は好きだ。
知る必要のない情報を聞き出そうとしてくる者の相手は疲れる。
『虎の姿は白虎。人としての姿はまだ不明。ただし、虎の被害は2週間前からこっちに集中しています。そして、4日前に鶴見川で虎の目撃証言が。
今、その行動と合致する人物がいないか調査中です』
「なるほど。僕は何をすればいい?」
『今日はまだ待機です。計画書を後日提示します。…………それと、これは確実な情報ではないのですが、探偵社が人虎を探しているという噂があります。一応、心に留めておいた方がいいかと』
「探偵社というのは…」
『決まっているでしょう?───武装探偵社です』
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作者名:安蒜 佑 | 作成日時:2020年3月11日 22時