第四十二話 ページ44
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「そう。失敗した、ねぇ」
『はい…………誠に申し訳ございません。全て、私の責にございます』
オレンジの机上灯が首領の顔の下半分のみを照らしていた。
”目は口ほどに物を言う”という言葉がある。その”目”が見えない状況は、いつも多くの情報を目から得る私にとってとても不安なものだ。
きっと彼はそれをわざとやっている。
だから余計に不安なのだ。
彼に嫌われていないか。私はまだ必要な存在であれているのか。
灯りひとつで、情報が圧倒的に不足する。
「気を落とすことはない。君達は
確かに探偵社の襲撃に失敗し、人虎の捕獲を
頑張ったから良いじゃあないか」
声が、ねっとりとまとわりつく。
「頑張りが大事。結果は二の次だ。
そうだろう?」
首領からの、最大限の嫌味。
合理と論理の
どんな処罰でも受ける覚悟はできている。
命をもって償えと云われれば、迷わずそうする自信はある。
だが、”捨てられる”事が一番恐ろしいのだ。
お前は不要だ、と。
何の感情も灯さぬ瞳で見つめられ、云われるのではないか。
それがただ、ただ、恐ろしい。
少しでも情報が得たくて。
首領の心の内を知りたくて目を凝らすが、やはり目元は影になっていて。
何も、見ることは叶わなかった。
見えるのは、灯りに浮かび上がった、弧を描く口元だけ。
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作者名:安蒜 佑 | 作成日時:2020年3月11日 22時