第三十五話 ページ37
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『こういうことですよ。太宰治さん』
そう言いながらドアを開け、階段を降りる。
『お久しぶりです、中原幹部。半年ぶりでしょうか？任務お疲れ様でした』
「あァ、ただいま、朱殷幹部」
わざと「中原幹部」なんて呼ぶと、意図を察してくれたのか、「幹部」とつけて呼んでくれた。
『おかえりなさい。あ、でも、太宰治は殺さないで下さい。招待したの私なので』
「誰がやったかと思えば、お前かァ。………ん？招待って言ったか？」
『はい。殺すつもりはありません』
「それは何故だ？」
私が殺すつもりはないと言った瞬間、彼から殺気が漏れる。
「此奴はポートマフィアの裏切り者だ。殺さないのは可笑しいだろ」
『その通りです』
「なら…」
『ですが、この人は元幹部です。我々ポートマフィアが何をしてきたかの証拠を握っています。殺されない為にそれを活用しない筈がありません』
当然のことだ。
私だったらそうする。
つまり、弱みを握られているのは此方なのだ。
「ねぇ、君達、私の存在忘れてなぁい？」
此方が真面目な顔して話しているのに、普通に入り込んでくる声。
「まぁ、そっちの朱殷君？が全部言ってしまったんだけどね。
中也、いいことを教えよう。明日『五大幹部会』がある。理由は私が先日組織上層部にある手紙を送ったから。
そして、君は私を殺すどころか懸賞金の払い主に関する情報の
『手紙にはなんと？』
「«太宰、
まぁ、君が言った通りだよ。
検事局に渡ればマフィア幹部全員百回は死刑に出来る。幹部会を開くには十分過ぎる脅しだろう？」
「そんな脅しに日和るほどマフィアは温くねぇ。
『そうなるでしょうが、それは幹部会で決める事です』
「決定より前に私を勝手に私刑にかけたら独断行動で背信問題になる。
罷免か、最悪処刑だ」
太宰治の顔がにやけている。
大方、自分が張っていた罠に嵌っていく様子を見るのが楽しいのだろう。
「そして……俺が諸々の
今度こそ、にっこりと笑みを浮かべた太宰治はひどく満足気だった。
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作者名：安蒜 佑 | 作成日時：2020年3月11日 22時
