第三十四話 ページ36
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ドアに隔たれた先から聞こえてくるのは、かつて相棒同士であったという、中原中也と太宰治の嫌味の応酬。
そして、凄まじい打撃音。
相棒だったのならば互いの事はよく知っているだろうし、恐らく、すぐに殺そうとはしない。
殺そうとしても、私が此処にいれば止められる。
何より、2人で話させていた方が本音を出してくれる可能性が高く、情報収集にもってこいだ。
冷たいドアに身を預け、静かに中の音を聞く。
音で判断するに、形勢は始終太宰治が劣勢。
マフィアきっての体術使いと言われている者が相手とはいえ、戦闘が得意でないという情報は確かなようだ。
しばらくすると打撃音も止み、声だけが聞こえるようになる。
「終いだ」
そう告げたのは、やはり中原中也の方。
「最後に教えろ。
「………」
「だんまりか。いいさ、拷問の楽しみが増えるだけだ」
あまり拷問なんて好まない癖によく言う。
もしかしたら、太宰治に関しては別なのかもしれないが。相当恨みがあると聞いているし。
だが、どうしてだろう。ここで話を聞いていると、だんだん2人が仲良しに思えてくるのだが。
このまま沈黙が続くかと思ったその時、声がつぶやくように空に投げ出された。
「……………
「敦?」
誰のことだろう、と私も思考を巡らせる。
そんな名の構成員はうちにはいないし、他の組織にもいなかった筈だ。
「君達がご執心の人虎さ。彼の為に70億の賞典を懸けた
…………あの人虎、そんな名前だったのか。
名前を知らなかったことを恥ずべきか、太宰治の目的が予想通りだったことを喜ぶべきか、微妙な気分になる。
「身を危険に晒してまで?泣かせる話じゃねえか………………と云いたいが、その結果がこの
──────『歴代最年少幹部』さんよ
……いや、
「?…どういうことだい?」
『こういうことですよ。太宰治さん』
ちょうど私の話題になったところで、ドアを開けて言う。
さぁ、ここからは私も混ぜて貰いましょう。
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作者名:安蒜 佑 | 作成日時:2020年3月11日 22時