壊れた獣の行く末は壱【文スト】 (ページ33)

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第三十一話ページ33

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私が合図を出すと現れたのは、二十名程の黒服達。

彼らに、運び屋「カルマ・トランジット」のメンバーがいる倉庫を囲ませる。
彼らの役割は逃亡者を出さない事。
1人も逃がさずに皆殺しにするには見張りが必要だからだ。

殺すだけなら、私一人で事足りる。

左腕に巻いてある包帯を解きならがら扉の前へ移動。

全員が配置に着いたのを確認し、アイコンタクトで後ろに控える2人の黒服に扉を開けさせた。

『どうも、カルマ・トランジットの皆様。私、ポートマフィアの朱殷(しゅあん)Aと申します。こんにちは』

突然現れた私に、彼らに動揺が走る。

『そして、さようなら』

私は、振り上げた右手に握った短刀を、自身の左腕に勢い良くぶっ刺し、引き抜いた。

いきなり現れた者の、理解不能な行動に戸惑うばかりで何も動けない彼らの未来は既に確定している。

『異能力───〖彼岸〗』

途端に私の周りを赤黒い文字列が踊り、目尻に朱が入り、頬には紅い痣が華の形を取って浮かび上がる。

当然のように吹き出した血。
だが、その血は重力に従わず、私の周りを浮遊する。

次第にその量は増え、分離し、小さな球状となった血が私を囲む。

その異様な光景に、やっと誰かが発砲した。

超高速で向かって来る弾は、残念ながら私に当たる事はない。

浮遊していた血が壁となって銃弾を止めていた。

自分達がどんな状況に置かれているのか、理解出来たのだろう。
次々に武器を取り出す。
鉄パイプ、ナイフ、銃。それぞれの武器を構えるが、もう遅い。

私の準備はとうに終わった。

軽く右手を上げれば、全ての血の玉が「弾」となる。

右手を振り下ろすのと同時に、血弾が彼らを襲う。

ひとつ残らず、心臓へと一直線に。

『任務、完了』

カルマ・トランジットは一瞬で壊滅した。
1人の少女の手によって。
いとも容易く。

「………コレが、”ポートマフィアの壊れた獣”……」

黒服の誰かが、そう呟いた。